Categories: サイコ

おかしな家族

この怖い話は約 3 分で読めます。

あまり深く考えたくはなかったので、すすめられるままにA子とマリオカートをしていると、兄が「喉が渇いた」と言ってオロナミンCを三人分とお菓子を持ってきた。
口をつけると生温かった。何やらしょっぱい。味も違うし、嫌な臭いがする。
ふと横を見ると何故かA子も兄もゲーム画面そっちのけで俺の顔をじっと見ていた。
まさかと思うけどこれ小便じゃないよね、と問いただすと兄は「小便なわけないだろう」と驚いたように大声で否定した。
その直後、階段のあたりだろうか。おばさんのものらしき大きな笑い声が一秒ほどして、不自然にピタっと止んだ。手で抑えたみたいに。
A子はずっと俺の顔を見ていた。テレビの光に照らされて反面しか見えなかったが、ニヤニヤしているのは分かった。
お菓子をよく見ると、ガムの包装紙が明らかに一度、開かれてバレないように戻されている。

714 712 2011/08/27(土) 10:24:06.81 ID:ft9FsHsR0
ここに至り、俺の頭はこの家に長居したくない感情でいっぱいになり、
トイレを借りるという口実をつくって部屋から脱出した。
階段には誰も居らず、階段の灯りも点ったままだった。
できるだけ自然な様子でそのままこの家から出て行ってしまおうという腹づもりで階段を下りて玄関に到着した。

真っ暗で何も分からない。壁際のスイッチを押し込むと、灯りが点いた。
いつの間にかドアに鍵がかかっている。
後ろが気になって振り向こうとして、部分的に灯りに照らされた真っ暗なリビングが視界に入った。
そこにはイスに座ったおばさん(おそらくA子の母親だろう)が居て、ニヤニヤしながらこちらを見ていた。
床には、無数のビンが並んでいたが、中身は黄色い液体の入った何かだった。
おばさんが立ち上がる。
二階の方からも床がきしむ音がした。

生きた心地がせず、クツを手に持って玄関から飛び出した。
犬が狂ったように俺にほえかかったが、そんなものを気にしている場合ではない。
走り去る途中でA子の家の方を振り返った。
おばさんは追ってはこなかったが、二階の窓から逆光になったA子と兄らしき影が並んでこっちを見ていた。

先生にはA子は案外元気だったとだけ報告し、それ以外のことは誰にも口外しなかった。
A子はそれ以降も学校には登校しなかった。

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