Categories: サイコ

落としましたよ

この怖い話は約 2 分で読めます。

夜型な俺は、その日も日付が変わってから空腹を感じて、軽く食事をすることにした。
昼間に買っておいた食材で腕を振るおうとしたんだが、いざ冷蔵庫を開けると、
一つ買い忘れた材料があったようで、これでは作りたい料理が作れない。

しかたなく24時間営業のスーパーへ徒歩で向かう。
せっかくわざわざ来たのだからと思って、今回は缶詰で作ることにした。

買い物を終えて帰り道。住んでいるアパートも見えてきた。
薄暗い道なんだが、ちょうど反対から女の人が歩いてきて、しかし特に気にすることなくすれ違った。
が、すれ違って5メートルくらい通り過ぎたところで女が呼び止めてきた。
「落としましたよ?」。

女が手に持っていたのはケチャップだった。
当たり前だが、そんな大きなものを落として気付かないわけもないし、そもそも買ってもいない。
怪訝に思いながら落としていない旨を伝える。
「いえ。あなたが落としたんですよ」。
「無いと困るんじゃないですか?」。
なぜか譲らない女に気圧されて、そのケチャップを受けとってしまう。不気味だ。

「私は……ピーマンは入れないほうが好きですけどね」。

そこで俺はぞっとして、逃げるように部屋に帰った。
ケチャップとトマトピューレはそのまま捨てた。
それ以来ナポリタンは一度も作っていない。

bronco

Share
Published by
bronco

Recent Posts

ブライダルフェア

いや、たいして怖くないんだけど…

4年 ago

教祖の妻の肖像画

親が昔、へんな宗教にはまってた…

4年 ago

The Body

10年くらい前の話だけど・・・…

4年 ago

謎の曲

出所が分からない所からの楽曲ダ…

4年 ago

エレベーターで見たもの

じゃあ俺が生涯で一番ビビった話…

4年 ago

強烈な遺体

久しぶりに民話でなく現代の話を…

4年 ago