Categories: 洒落怖

家に入れたくない理由

この怖い話は約 3 分で読めます。

先生から教えてもらった彼女の家に向かう途中、私はかなりドキドキしていた。
プリントを届けに行こうと思ったのは、ほんの軽い好奇心からだった。彼女の家を見てみたい。まさか噂ほど酷い家ではないだろう、と。
しかしいざ行く段階になって、自分のした行為が、彼女への裏切りに当たるのではないかと思えてきた。けして口には出さないけど、彼女は家族のことを知られるのを嫌がっているに違いない。特に、私には。
後悔したけど、重要なプリントも有ったから捨てていくわけにもいかない。届けに行くしかなかった。トボトボと歩き、彼女の家についた。
少し小さめの一軒家。少し古びてはいるけれど、街並みに溶け込む普通の家で、私は少し自信を取り戻し、一呼吸置いてインターホンを押した。
二階の窓がガラッと開く。彼女だ。
彼女はびっくりした顔をして、その首を引っ込めた。続いて、階段を降りてくる音。母親が出なかったことに私はホッとして、彼女が出てくるのを待った。

210 本当にあった怖い名無し sage New! 2012/12/27(木) 22:36:45.82 ID:oAt9Z5nmI
スーッ……ストン。
ふすまが開いて、閉まる音。

なんだろう?と思ったけど、直後にドアが開いて、彼女が出てきた。風邪が治っていないのか、顔色が悪い。
「A(私)ちゃん、どうしたの?」
「これ、プリント預かったから」
彼女の声はハッキリとしていて、別に変な様子は無い。私は安心して、プリントを渡した。
早く元気になってねとかだの二言三言言葉を交わして、彼女は二階へと上がって行った。
何事もなくプリントを届けられたことにホッとして、私は帰ることにした。

彼女の家を去る時に、私はあることに気づく。
玄関の向かってすぐ左に当たる部屋のカーテンが開いている。
さっきの、ふすまの音の部屋?
そう思って、何気なく見た。
これがいけなかった。
畳の部屋の中心。小柄な女の人が、両手で何かを上に掲げ、フラフラと立っている。丁度、電球を交換してるみたいに。
手に持ってるのは猫だった。
いや、もしかしたら犬?わからない、死んでるように見える。
何あれ?
急に怖くなって、私は一目散に駆け出した。
その時背中のほうで、カーテンが閉まる音を聞いた気がする。

211 本当にあった怖い名無し New! 2012/12/27(木) 22:37:36.20 ID:oAt9Z5nmI
翌日、彼女は学校にやってきた。
私は昨日見たものが気になって気になって、でも彼女に聞けるわけないし、悶々としていた。
彼女は普段通りで、私はもしかしたら本当に電球を交換してる母親を見ただけかもと思い始めた。
そう思ってたら、休み時間、彼女がこんなことを言った。
「今日ね、お母さんまで風邪引いちゃって、うつしちゃったみたいなの。Aちゃんは大丈夫だった?」
間接的な話題だけど、彼女が母親のことを口にするのは初めてで驚いた。かなりの違和感。
そして、給食前の四時間目、彼女は倒れて保健室に連れてかれた。
かなり無理をして学校に来てたみたい。そんな様子はなかったけど、彼女は38度近くまで熱が上がっていて、実際はフラフラの状態だったらしい。
彼女は先生の心配を振り切って、一人歩いて帰って行った。学校の近くだから大丈夫だと思うけど、私は心配で、彼女のことを考えている内に、一つの嫌な考えが浮かんだ。

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