Categories: 洒落怖

丸大ハム

この怖い話は約 3 分で読めます。

作業服の男は両手で捧げるように”何か”を持っている。
何故かその男の周りだけが薄暗くてよく見えない。

男は自分の目の前に来て、その”何か”を渡そうとするんだけど、
こんなに近くで見ても、それは”何か”としか表現できない。

金縛りなのに、手が勝手に動いて
“何か”を受け取った。
ヌルッと生温かい感触。
大きさの割には重い。
強いて言えば、丸大ハムの丸ごとの大きいハムって感じかな。
そのハムみたいなところに、細くて小さい胎児の手足がついていて、ブンブン振り回している。
ヌルッと生温かいのは血だ。

650 : 本当にあった怖い名無し[sage] : 投稿日:2013/01/12 03:09:15 ID:byaGCcn60

心臓が口から出そうになるってこういうのなんだ。
どうして欲しいんだよ、こんなもの貰っても困るんだよ。
これはさっきの夢の続きなんだ。
覚めろ、覚めろ、覚めろ、
夢だ、夢だ、夢だ。
体を動かす事も、声をだす事もできない。

目を閉じたその時、ベッドに何かが乗った。
見ると、それはうちの猫だった。
猫は、背中を丸めてアーチ形になって、尻尾は3倍くらい太くなっている。
耳を後ろに反って今まで聞いたことがないような、恐ろしい声で男を威嚇している。

男は、相変わらず無表情だが、何となくビビってる気配がする。

やれー!そいつを追っ払うんだ!
男が手を伸ばして、丸大ハムを掴もうとした時、猫が引っ掻いた。
…と思ったら、男の手をすり抜けてしまった。

男は、丸大ハムを鷲掴みにしてこちらに背を向けた。
そして、来た時と同じように両手で捧げるように丸大ハムを持ちかえ、ゆっくりと歩いて出て行った。

652 : 本当にあった怖い名無し[sage] : 投稿日:2013/01/12 03:14:56 ID:byaGCcn60

茫然自失。
暫くそのまま座っていたら、猫が鳴いて我に帰った。
猫は興奮覚めやらずって感じで、体を舐めまくっている。
金縛りから解放されたけど、心臓はまだバクバクしていた。

夢…だよな。そうに決まってる。

猫が体をスリスリしてきたんで、よくやった、偉いぞって頭を撫でてやったよ。

時計を見たら、午前2時15分だった。仕事へ行くまでまだ時間はあるし、とりあえずもう一度寝ることにした。
うちの猫はベッドで寝ないからちょっと心細いけど、きっと何かあれば助けに来るだろう。
電気はつけたままにした。

布団を顎のところまで深々とかけて目を閉じた。
痛み止めが効いているんで、すぐ眠りに落ちた。

どの位寝てたんだろう?口元に何かが触れる感触でボンヤリと目が覚めた。

猫が起こしに来たのかな?
うちの猫は毎朝、目覚ましが鳴る1時間前に起こしに来て、肉球で私の顔を軽くポンポンする。

653 : 本当にあった怖い名無し[sage] : 投稿日:2013/01/12 03:17:19 ID:byaGCcn60

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