この怖い話は約 3 分で読めます。

「これ何か変じゃない? 明らかに他の絵と違うんやけど……」
「や。別に不良の事はよく知らんけど、こういう絵もかくんじゃないかなぁ」
「そうやけど……」
Hは何故か不安気にKに話しかけていたが、Kはそこいらの絵と同じように不良がふざけて描いたものだろうと気にも留めていない様子だった。
「でもすっげぇ綺麗な円やなぁ。中に描かれてるこれって花かな? 蓮っぽいけど」
「アーティスト気取りの馬鹿が描いたんじゃないん? でも確かに不思議な絵やなあ」
俺もKと同意見で、気にも留めずに何だろうどうだろうと意見を交わしていた。
本当に綺麗な円形だったし、まるでPCのペイントツールで描いた魔方陣みたいだった。

761 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/07/13(水) 00:26:25.99 ID:JFAF3D700

その時、誰かがこちらへ近づいてくる気配があったので、誰だろうと入口あたりを振り返った。
するとそこから伯父さん(Kの親父)が現れて、俺たちを見つけるなり眉間にしわを寄せて何やってんだと呆れた声を出した。
「居ないと思ったらやっぱここにいたのか。ホラ、休憩終わったからさっさと戻るぞ」
どうやら俺たちを探していたらしい。幸いにも建物に入った事を咎められそうになかったので、怒られる前に慌てて入口の方へと駆けて行った。
その時、伯父さんが例のペイントに気付いた様で、俺達の後ろに目をやると、そのペイントをじーっと睨みつけ始めたのよ。
その時はて、てっきり伯父さんもあの絵が気になんのかな? 程度にしか思わなかったけど。
でも伯父さんの顔はみるみる険しくなっていき、最後には手で顔を覆って天を仰ぐような仕草をしながらこう語りかけてきた。
「お前ら……アレ見とったんか」
「アレ?」
「あの花が描かれた家紋や」
家紋? 何の事? と思ったが、すぐに例のペイントの事だと分かった。
すぐさま頷いて見せると、伯父さんは「うわー、マジかー」と呟くように言って顔を伏せてしまった。

「一体どうしたん?」
Kがその様子を見て伯父さんに話しかけると、伯父さんは苦々しい顔をしたまま顔を上げると、
「……いや、何でもない。ホラ、さっさと戻るで」
と言ってスタスタと外へ歩いて行ったしまった。
その様子を見て思いっきし不安な気分になった俺たちは、慌てて伯父さんのあとを追う様にしてその建物を後にした。

あの後、伯父さんが俺の両親やHの両親。お婆ちゃんを含めて話し合いみたいな事をし始めて、俺たちは墓掃除をしろとその場から追い出された。
そして墓掃除が終わる頃に大人組達がやってきて、俺たちを呼びだすと、今日あの廃墟で見た模様。あれを見たのは今回が初めてか、以前に見た事は無いかと鬼気迫る様子で聞かれた。
その迫力に押されて、全員が恐る恐る首を縦に振ると、大人たちは安堵したかのように顔を緩ませてフーッと息をついた。
そして、再び俺たちに向き直ると、今日見た事は忘れなさい。それから絶対に廃墟とかには近づかないようにしなさい、と真剣な顔で言われた。

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