この怖い話は約 3 分で読めます。

501 4/13 sage New! 2011/08/14(日) 17:36:23.31 ID:zBvOhT5L0
孵化室というのは鶏の生んだ玉子を孵化器で暖めて孵し、生まれた雛をある程度まで育てる専用の建物で、本来なら孵化所とでも呼ぶべきなのでしょうが、お爺ちゃんは孵化室と呼んでいました。
私もそっとお爺ちゃんの後に入ってみると、中は照明が付いておらず、孵化器の中から漏れるヒヨコ電球のボンヤリとした赤い光だけが頼りでした。
薄暗いと言うかコタツの中のような赤暗い中で、お爺ちゃんは凄く真剣な顔で孵化器の中を覗いていました、そしてたくさんある玉子の中から3つほど取り出し、玉子から顔をそむけるといきなりブリキのゴミ箱の中に叩きつけました。
私はビックリして「なにしょうるん?」と大声で言ってしまいました。
お爺ちゃんは私以上にビックリした様子で、倒れるんじゃないかと心配になるくらいの形相でしたが、私だと分かると安心したのか全身の力が抜けたようになって「なんじゃ、坊か、ビックリさすなや」と苦笑いを浮かべました。
503 5/13 sage New! 2011/08/14(日) 17:38:36.95 ID:zBvOhT5L0
私がもう一度「なにしょうるん?」と聞くとお爺ちゃんは「悪いんをとりょうるんよ」と言って、また孵化器の中を覗き始めました。
私はそれまでに孵る前の雛を間引くなぞ聞いたことも無かったので
「ヒヨコに悪いんがおるん?」と聞きました。
お爺ちゃんは「ほうよ、取らにゃあ大変なことになるんよ」と言って孵化器の中からまた一つ玉子を取り出しました。
私は玉子を良く見ようと覗き込みましたが、お爺ちゃんがあわてた様子で「こりゃ見ちゃダメじゃ!目が潰れるで!」と言ってすぐにブリキのゴミ箱の中に玉子を叩きつけてしまいました。
私が見た玉子には、中から雛が突いたのでしょう、大きなヒビが入っており、もうじき雛が孵りそうな様子でした。
ゴミ箱の中はスプラッタな様子が容易に想像できたので見たいとも思いませんでしたが、お爺さんは私の目から隠すようにすぐに蓋をしていました。

505 6/13 sage New! 2011/08/14(日) 17:41:39.88 ID:zBvOhT5L0
その時、ゴミ箱の蓋に何か白い紙のようなものが貼ってあるのが見えました。
何だろうと思っているとお爺ちゃんが腕時計を見て、
「0時を回ったけえ、今日は終わりじゃ、坊、帰って寝ようや」と言い、すぐに孵化室から出ようとしました。
私も夜中にこんな不気味なところへ一人で残されるのは御免なのであわてて孵化室を出ました。
そのとき、孵化室のドアの横になにか玩具のようなものが見えたような気がしましたが、もう眠いし、ちょっと怖くなってきたので次の日見ることにして、お爺ちゃんと一緒に母屋へ帰り、その晩はお爺ちゃんの布団で一緒に寝ました。

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