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782 本当にあった怖い名無し sage 2007/09/28(金) 18:14:10 ID:cddhPkk60
Hは部屋に引きずり込まれそうになっていた。闇の淵からHの脚を掴んでいるのは腐乱した手。成人男性の手だ。
Hも俺も、そして闇の中の何かも悲鳴を上げ絶叫していた。しかし他の大人たちが駆けつけてくる気配はない。
あるいは先刻の静寂の時点でおかしいと気づくべきだったのかもしれない。
しかしそんなことを考えている余裕はなかった。
何しろ目の前でHが引きずり込まれようとしているのだ。形容しがたい恐怖が俺を襲った。
とっさにHの腕を掴み、逆に引っ張った。脚と腕の引っ張り合い。
当然Hは痛そうで、そして怖そうな顔をしていた。
やがて男の腕はふくらはぎからくるぶしへと滑り、足首を掴んだかと思うと今度は靴を掴み、
最後には靴が脚から抜けて闇の中へと吸い込まれていった。
慟哭が破壊的なまでに強くなった気がした。

そして気がつくと、俺とHはコンクリートで塞がれた、
かつて部屋があったかもしれない場所の前で、二人して泣いていた。
時刻は3時36分。どうやら二人とも運良く引きずり込まれずに済んだようだった。
Hの靴は片方なくなっていたが。
二人して泣きまくっているのに気がついた用務員のオバサンが俺達に近づいてきた。
そして俺達から数メートルほどのところでふと立ち止まって顔をしかめたかと思うと、
今度は見る見るうちに顔が青ざめていく。そして大急ぎで職員室へと駆けていき、
やがて俺達の周りは人でいっぱいになった。その後のことは俺もよく覚えていない。
大泣きしていたし、周りの人たちはなにやら騒ぎまくってるし。
ただすぐに温かい飲み物が差し出されて、それ飲んで安心したのは覚えてる。
あと救急車で病院に運ばれたことも。

783 本当にあった怖い名無し sage 2007/09/28(金) 18:15:39 ID:cddhPkk60
俺とHはしばらくの間入院することになった。外傷は二人ともなかったが、精神のケアのためだ。
入院中、担任の先生と両親、それから年配の男の人が面会に来た。担任は男を「昔小学校にいた先生だよ」と紹介した。
両親はすでに話を聞かされているらしく、男が話を始めるとそそくさと部屋から出ていった。
彼は俺とHに俺達の見たものはおそらく現実だということ。しかしきっと夢や幻と考えた方がこの先悩んだり
苦しんだりしなくて済むだろうから、そう考えなさいということ。
もう面白半分であの部屋で起こったことを語ってはいけないということ。
そしてあの部屋で一体何が起こったのか。その全てを話してくれた。
俺達は神妙になってその話を聞き、そして彼の言葉通り、その後学校に戻っても二度と暗室に近寄ることもしなければ、
話すこともしなかった。

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