この怖い話は約 4 分で読めます。

そんな奇妙な自殺騒動が収まらぬうちに、今度は学校中で不気味な噂が流れ出した。
「ある時刻になるとあの部屋のドアがバンバンと物凄い勢いで内側から叩かれている」
実際、児童だけでなく、先生や用務員の人達の中にもこれを体験した人はおり、
特に同じ1階に休憩室のある用務員の人たちはかなり怯えていた。
そしてついにある日、犠牲者が出た。校舎内で、Aという児童が忽然と姿を消したのである。
1時間後、彼は全身を震わせながら「暗室」のドアの前に座り込んでいた。その体からは酷い腐臭がした。
以来、「あの部屋では死んだ少年が閉じ込められた時刻、すなわち3時35分になると、
ドアを激しく叩く音がし、それに答えてしまうと中に引きずり込まれ、閉じ込められてしまう」という噂が、
児童たちの間でささやかれるようになったのである・・・

780 本当にあった怖い名無し sage 2007/09/28(金) 18:12:16 ID:cddhPkk60
さて、話を俺の小学生時代に戻そう。

実を言うとこの暗室、俺が小学校に上がった頃にはすでに「存在しない部屋」となっていた。
いや、別に取り壊されたとかそういうことじゃない。ただ、暗室のドアがあったと思しき場所は
コンクリートで完全に塞がれ、壁と同じように塗られていた。
もちろん学校の間取り図にも暗室らしき部屋の存在は記されていない。
文字通り存在しない部屋というわけだ。知らない人から見れば、ドアがあった場所などただの壁である。
ただ、後から塞いだドアの跡はよく見ればはっきりとわかったし、実際他の児童たちの間でもその場所は有名だった。
そんな存在しない部屋の正体を掴もうなどと少々無茶な提案をしてきたのは、
当時の俺の友達で小学生の分際でオカルト好きという変人のHという女の子だった。
Hいわく、「何かあった時に男手があった方が心強いから」ということらしい。別に俺そんなに頑強な少年じゃなかったけどね。
俺自身は特にその話自体に興味はなかったのだが、なんとなく二つ返事でOKしてしまった。
こうして謎の部屋の正体を掴むべく俺とHは動き出したわけである。

壁の向こうからノックのような音が聞こえてくるのが3時35分だったため、
俺達は5限で授業が終わる日を選んで実行することにした。
ノックが聞こえるかどうかを確かめ、聞こえたらそれに答えてみよう。というのがHの意見だった。
「おいおいそれってマズいんじゃなかったっけ?」と俺。「そのためにアンタを呼んだんでしょ」とH。
そして、あっという間に時間は過ぎ、3時35分になった。

781 本当にあった怖い名無し sage 2007/09/28(金) 18:13:08 ID:cddhPkk60
と、同時に俺とHが「お」と小さく呟く。

・・・ドン・・・・ドンドン・・ドン・・・・・

微かに壁の向こうから音がする。ノックと形容するには激しすぎる、
むしろ中に閉じ込められた少年が死に物狂いで助けを求めるかのような・・・
音に聞き入ったまま動けずにいると、Hがいつの間にか壁の正面に立っていた。右手を軽く上げる。
「おい・・・」という俺の制止は無視され、Hは二、三度軽く壁をノックする。
途端に、ピタッと音が止んだ。放課後の廊下に静寂が戻る。奇妙に感じるほどの静寂が。
と、次の瞬間、壁が真っ黒になっていた。
否、コンクリートの壁が、そしてその奥にあるはずのドアが、消失していた。
真っ黒に見えたのは中にある、いやあったかもしれない部屋が完全な闇だからだ。
外からの光すら飲み込んでしまう闇。
何年も、いや何十年もの間、決して光が当たることのなかった部屋と、そこに閉じ込められていた「何か」の慟哭。
闇の奥底から響いてくる壮絶な悲鳴とHの悲鳴が聞こえてきたのは、ほぼ同じタイミングだった。

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