この怖い話は約 3 分で読めます。

途方もない時間が過ぎていると感じているのに、まだ外は明るかった。

するとAがゴソゴソと音を立て出した。
何をしているのかと思い、あまり大きな音を出す前に止めさせようと思ってAの方に向き直ると、Aは手に持った紙とペンを俺達に見せた。

こいつは、坊さんの言うことを聞かずに密かにペンを隠し持っていたのだ。
そして紙は、板ガムの包み紙だった。まあメモ用紙なんて持っているはずない俺達なので、きっとそれしか思い浮かばなかったんだろう。

(こいつ何やってんだよ・・)
一瞬そう思った俺だが、意思の疎通ができないこの状況で極限に心細くなっていた所為もあり、Aの取った行動に何も言う事が出来なかった。
むしろ、ひとつの光というか、上手く説明できないんだが、とにかくすごく安心したのを覚えてる。

Aはまず自分で紙に文字を書き、俺に渡してきた。

”みんな大丈夫か?”

俺はAからペンを受け取り、なるべく小さく、スペースを空けるようにして書き込んだ。

”俺は今のところ大丈夫、Bは?”

そしてBに紙とペンを一緒に手渡した。

”俺も今は平気。何も見えないし聞こえない。”

そしてAに紙とペンが戻った。

こんな感じで、俺達の筆談が始まったんだ。

A”ガム残り4枚。外紙と銀紙で8枚。小さく文字書こう”

俺”OK。夜になったらできなくなるから今のうちに喋る”

B”わかった”

A”今何時くらい?”

俺”わからん”

B”5時くらい?”

A”ここ来たの1時くらいだった”

俺”なら4時くらいか”

B”まだ3時間か”

A”長いな”

こんな感じで他愛もない話をして1枚目が終わった。

するとAが書いてきた。

A”○○文字でかい”

俺は謝る仕草を見せた。

するとAは俺にペンを渡してきたので、

俺”腹減った”

と書き込みBに渡した。

そしてBが何も書かずにAに紙を渡した。

するとAは

A”俺も”

と書いて俺に渡してきた。

あれだけ心細かったのに、いざ話すとなるとみんな何も出てこなかった。

俺は、日が沈む前に言っておかなければならないことを書いた。

俺”何があっても、最後までがんばろうな”

B”うん”

A”俺、叫んだらどうしよう”

俺”なにか口に突っ込んどけ”

B”突っ込むものなんてないよ”

A”服脱いでおくか”

俺”てか、何も起きない、そう信じよう”

Bは俺の書いた言葉にはノーコメントだった。

俺も書いたあと、自分で何を言ってるんだろうと思った。

坊さんは、何も起きないとは一言も言っていなかった。
むしろ、これから何が起こるのかを予想しているような口ぶりで俺達にいくつも忠告をしたんだ。

そう考えると俺達は、一刻も早く時間が過ぎてくれることを願っている一方で、本当の本当は、夜を迎えるのがすごく怖かったんだ。

夜だけじゃない、あの時ああしてる時間も、本当は怖くてしょうがなかった。
唯一の救いが、互いの存在を目視できるということだっただけで。

俺の一言で空気が一気に重くなった。

俺はこの空気をどうにかしようと、Bの持っていた紙とペンをもらい、

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bronco

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  • 漁に小さい子供を連れて行っても足手まといになるだけだから連れて行かないよ

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