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小学生の頃、夏休みはよく母の実家に遊びに行っていた。祖父母は優しくて小遣いをしこたまくれたから毎年行くのが楽しみだった。
あれは小五の夏だった。塾に通わせようとする親を振り切るようにして田舎へ来た。
しかし親の方が一枚上手でそこから通える塾に入る手続きをされてしまい、お陰で毎日塾通いする羽目になってしまった。
朝8時に祖父母の家を出て最寄りのバス停まで10分ほど歩き駅前の塾へという日々であまり遊んだり出来ず不満だったが、祖父が交通費をたっぷりくるたので帰りに買い食いしたりゲーセン寄ったりする楽しみはあった。

田舎へきて一週間ほど経った頃だった。夕方バスを降りて家へと歩いていた。ちなみに家とバス停の間は田んぼの中の畦道で夏でも風が吹いて心地よかった。
途中に小さな神社がありその周りだけこんもりと木が繁っていた。近所の子供も寄り付かず人気のない場所だったが俺は妙に気に入ってちょくちょく境内に入って置いてあったブランコを漕いだりしていた。
その日は曇り空で夏にしては薄暗い日だった。てくてく歩いてちょうど神社の森に差し掛かったとき、前方にふと妙なものが見えた。空間の一部がとろとろと歪んでいる。例えるなら陽炎のようなものだった。
しかしこんな日に出るはずがないし、しかもちょうど道幅と同じくらいの範囲で現れている。高さは大人の身長くらい。まるで道を塞ぐ透明の壁のようだった。
最初はそれほど気にならなかったが近付くにつれて次第に気味が悪くなってきた。どうしよう。そう思った瞬間だった。
「××くーん」
背筋を悪寒が駆け上がった。振り向くと畦道をこっちへやってくる黒いものが見えた。ボールのようにバウンドしながらゆっくりとこっちへ向かっている。
「××くーん、××くーん」
また聞こえた。 しわがれてエコーのかかったような女の声。妙に甘ったるい。黒いものが発しているのか? それが跳ねるたび細長く黒いものがばらばらと広がった。
何度目かのバウンドでそれの中身がちらりと覗いた。外側とは違う白い白い何か。薄暗い中でも俺には見当がついてしまった。それは顔だった。周りは髪の毛だったのだ。つまり、生首。
女の生首が1メートル以上はありそうな長い髪を振り乱して俺の名前を連呼しながらこっちへ向かって飛び跳ねていた。

127 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2014/07/24(木) 23:36:43.67 ID:I3sOSHZZ0.net
恐怖のあまり叫んだ。カバンを放り出して走った。生首に比べたら透明のもやもやなんて何ともないと思った。歯を食いしばって飛び込んだ。その瞬間、耳がキーンと鳴りどこか遠くで「ギリギリギリギリ」と歯車が軋むような音がした。
気がつくともやもやの前に立っていた。横には放り出したカバンがある。とっさに振り返ると生首はいつの間にかすぐ後ろまで迫っていた。俺を呼ぶ声は絶叫に近くなっていた。
髪の間から白い顔が睨んでいた。睨みながら笑っていた。唇は無かった。
俺は金縛りにあったように身がすくみ動けなかった。声も出なかった。口は半開きで涙と涎を垂れ流していた。そのままどうしようもなく接近してくる生首を見ていた。

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