Categories: 洒落怖

ストーカー

この怖い話は約 3 分で読めます。

その晩さっそくメールがあった。
「今誰かがいます、怖いです」
「先輩は家ですか?もし今バイト先だったら、ちょっと私の家の前まで来てもらえませんか?」
「電話してもいいですか」

たてつづけにメールがきて、途中になんとか一回「いま家だよ」と返事ができた。
すぐに着信があった。ひそめた声で、もしもしとなんとか聞こえる。
「帰ってるってバレるのが怖くて、昼から一度も電気つけてないんです」
そのときは夜の0時だった。
「そうしたら、隣のマンションの電気で、カーテンの向こうが明るくて、影が」
そこまで言って黙る。泣いているみたいだった。
「やっぱりベランダにいるんです。それに、なにか言ってるんです…たぶん、『いるんだろ』って……」

653 :4/4@\(^o^)/:2014/09/15(月) 20:36:44.39 ID:bMte0j+t0.net
ぶつ切れで話されるので、なんて言っているのかよくわからなくて、何度か聞き返した。

彼女はベッドの頭側の装飾板の陰に隠れているそうだ。窓からはたぶん姿が見えない。
隠れているベッドの装飾は穴が少しあいていて、なにか感じた彼女がその穴から窓の方を覗いたそうだ。
カーテンには大きな男の影がかかっていた。ほとんど窓にぴったりくっついているくらい、影はくっきりしているそうだ。
驚いて壁に肘をぶつけると、その後からぼそぼそ声が聞こえたのだという。
「いるんだろ」と。
その声が聞こえているんだから、この電話の声も影の男に少しは聞こえているかもしれない。
でもベッドの陰から出ていくのが怖くて、男が諦めるのを待っていると言う。

「先輩、お願いです、助けてください…。うちの前に来て、人影がいたら、警察に電話してくれませんか?
もう家族も信じてくれないんです、覗かれてるって」
すごく必死な訴えに、俺はわかったと言って電話を切った。
それから頃合いを見計らって、「見に行ったけど、誰もいなかったよ。今ならリビングに移動できるよ」とメールを送った。

見に行かなかった。でも、本当に誰もいるはずがない。
彼女の部屋のベランダには、木を登ったって入れっこない。屋根と一緒で、堂々とはしごでも使わなきゃ無理だ。

ストーカーしてたのは俺なんだけど、もう彼女に興味なくなって家にいたし。いたとしたら、きっと人間じゃないと思う。

Page: 1 2

bronco

Recent Posts

迷い

霊とかとは全然関係ない話なんだ…

4年 ago

血雪

全国的にずいぶん雪がふったね。…

4年 ago

母親の影

私が小6の時の夏休み、薄暗い明…

4年 ago

閉じ込められる

彼はエレベーターの管理、修理を…

4年 ago

彼女からの電話

もう4年くらい経つのかな・・・…

4年 ago

テープレコーダー

ある男が一人で登山に出かけたま…

4年 ago