Categories: 洒落怖

大樹

この怖い話は約 5 分で読めます。

これは、三年程前、私がアルバイトをしていた時、その旅行先で起きた出来事です。

三年程前、私はアルバイトで、とある学習塾の講師をしていました。
今テレビ等でCMが流れている様な学習塾程大手ではありませんでしたが、地元ではそこそこ有名な塾で、通っている生徒さんも沢山いました。
地元密着型で、基本的には県内のみに教室があったのですが、当時は最盛期で、県内に三十校以上は教室が存在していたと思います。
そんな会社ですが、やはり、不景気の波には逆らえず、年々経営が悪化していきました。
最初は黒字だった経営が、少子化や不景気の影響で徐々に赤字に・・・最終的には、教室を幾つか閉鎖するまでになってしまったのです。
経営陣は、流石にこれはまずいという事で、集客の為、新しいイベントを計画しました。

それは、全塾生を対象とした、夏休みの合宿です。
今では、学習塾による夏休みの合宿は最早恒例行事となっておりますが、私がアルバイトをしていた当時は合宿をする学習塾は中々少なく、
また、合宿を行う為の宿泊費、参加する生徒さんにお支払い頂く参加料金等かなり高額なものもあり、打ち出す側としては、かなり勇気のいる行事でした。
しかし、これ以上の経営悪化と教室の閉鎖を防ぐ為、会社は合宿に踏み切ったのです。
参加料金が高額な事もあり、当初は、各教室の半数か最低でも三分の一が来てくれたら良いか、と経営陣や講師は考えていたのですが、
我々の予想を良い意味で裏切り、まさかの全教室全員参加という結果になりました。
経営陣も講師も歓喜に湧き、この合宿を絶対に参加させようと心に決めたのです。
そして、合宿の日がやって来ました。
私達は静かで、騒音も少なく、勉強の妨げとなる様な誘惑である繁華街も少ない、とある県のホテルを選びました。
冬場にはスキー客でとても賑わう場所なのですが、夏場には雪もなく、観光客も少く、また自然も多くて空気の綺麗な理想的な場所だったのです。
合宿は、九泊十日の長丁場で、毎朝必ず六時に起床し、付近の高原を散歩してから、朝食をとり、勉強をする、というものでした。
その、朝の散歩の下見の時間の事です。
87 :夕紅 ◆e/DkDKVoCg @\(^o^)/:2015/03/08(日) 21:33:25.71 ID:QZKoiujk0.net[2/7]
私達は子供達の気持ちが少しでも盛り上がれる様、毎朝散歩コースを変えているのですが、三日目の散歩コースの下見中、私達は不思議な物を目にしたのです。
それは、とても大きな・・まさに、巨木というのに相応しい大樹だったのですが、変わっているのは、それが、まるで三つ編みの様に三本が絡み合っているのです。
三つの巨木が絡み合う、その真下に、古い上に風雨に晒された事によりインクが掠れ文字は読めなくなっていましたが、立て札の様なものがありました。
それに気付いた、とある講師の男性が
「これを縁結びの木にしよう!」
と、言い出したのです。絡まる姿から縁結びを連想したのでしょう。
「縁結びの木って言ったらさ、女子に人気出そうじゃない?」
「確かに!」
そう、確かに、女子には人気が出そうな内容かもしれません。
うちの学習塾は当時、男子よりも女子の比率が高く、女子の人気を得たり、好感度を高める事が必須だったのです。
そして、とある男性講師俊輔さんが遂に
「取り敢えず、これは抜いて隠して置こうぜ!」
と、大樹の側に刺さっていた立て札を抜いてしまったのです。
思わぬ俊輔さんの行動に、私達は一瞬息を呑みました。
しかし、数人は直ぐに
「そうだね!」
「こんなもんがあっと辛気臭いもんね!」
「隠しちゃえ隠しちゃえ!」
と、抜いた立て札を近くの繁みまで運び、隠し始めたのです。
そして、散歩に来た生徒達に、その大樹はこの土地に古くから伝わる縁結びの木として説明をしたのです。
その散歩中の事でした。
雪がない、ゲレンデであった高原を散歩している最中ーー
「うわぁぁぁっっ!!」
絹を裂く様な悲鳴と共に、私の目の前を歩いていた筈の俊輔先生が消えたのです。
「えっ?!何?!」
私も生徒も混乱しました。
そして、辺りを見回し、俊輔先生がいなくなった辺りを探してみると
「きゃぁぁぁ!!!!」
そこには、地面と地面の間に亀裂が走っており、まるで落とし穴の様になっていたのです。
そして、その中に俊輔先生がいました。
知らずに足を滑らせてしまった為に受け身が取れなかったのか、首と足を有り得ない方向に曲げた状態で亡くなっていたのです。
88 :夕紅 ◆e/DkDKVoCg @\(^o^)/:2015/03/08(日) 21:34:55.43 ID:QZKoiujk0.net[3/7]
講師も子供達もパニックに陥りました。
そして、私達は我に返ると、どうにか、泣き叫んだり放心する子供達を宥めながらホテルに戻りました。
ホテルに戻って直ぐに経営陣にことの次第を報告したのですが、合宿は即中止の判断が下されました。
そして私達は手分けをして子供達の保護者に電話をしたのですが。

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