Categories: 洒落怖

為松の竹林

この怖い話は約 3 分で読めます。

息子が死んで半年も経たないうちに、為松さんも亡くなった。
床擦れした背中の肉は一面腐り落ち、布団から下の畳まで腐汁が染み渡っていた。
生きながら干乾びた為松さんは、飢えと渇きからか喉を掻きむしった姿のまま硬直し、
目を見開き真っ黒な口を開け、鬼の形相で死んでいたという。
元気だった頃の穏やかで優しい面差しはどこにも残っていなかった。
782 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/09/22(火) 10:29:10.89 ID:CB/MEM2K0.net[4/7]
財産と屋敷を手に入れた嫁は、為松さんが死んだ奥座敷を壁から畳まで張り替えたが
どういうわけか畳は何度替えても、カビが生えて腐ってしまう。
それもいつも決まって、為松爺さんが寝ていた場所の畳からカビが広がっていく。
女はだんだんと恐ろしくなって精神を病み、やつれて入院してしまった。
そしてそのまま高熱を出して死んだ。
うわ言で「御免なさい、御免なさい」と謝り続けたが、
数日後に喉を掻きむしって目を見開き、為松爺さんと同じ姿で死んだ。

しばらくして為松さんの屋敷は取り壊され、跡地には竹が生い茂った。
妙な風が吹き溜まり、その音が尺八のように聞こえると噂された。
竹林は薄暗く湿っていて、小鳥や犬猫の死骸がよく転がっていた。
この竹林で取った筍を食べた人が、高熱を出して死んだりもした。
「為松の竹林で取った筍や茸は絶対に食べてはいけない」
「子供はあの竹林へ入ってはいけない」
祖父が子供の頃は、親によくそう言われたそうだ。
783 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/09/22(火) 10:30:50.03 ID:CB/MEM2K0.net[5/7]
戦後その場所は住宅地になり、今はマンションが建っている。
戦争とさらにその後の災害で古くからの住人はいなくなり、
そこに竹林があったことなど誰も知らない風情だ。
私も随分前死んだ祖父から聞いた昔話を、今まですっかり忘れていた。
小学校へ通い出した姪っ子が、妙な話をするまで…
「みかちゃんのマンション、うさぎ飼えないんだって」
「すぐ死んじゃうマンションだから、ダメなんだって」
784 :本当にあった怖い名無し@\(^o^)/:2015/09/22(火) 10:37:03.55 ID:CB/MEM2K0.net[6/7]
…以上、終わり。
うちは昔からこの近くに住んでる為松さんの遠縁にあたり、
この話も祖父にチラッと聞いたことがあったんだけど、本当に忘れてた。
マンションの住人に話したのはうちじゃないし、どこからもれたのかわからないけど、
このマンション、地味に騒ぎになってて退去した住人も出てるらしいです。

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