Categories: 洒落怖

ナナシの話

この怖い話は約 4 分で読めます。

狂ったようにアキヤマさんは笑い出した。怖かった。アキヤマさんじゃない。こん
なのアキヤマさんじゃない。僕はアキヤマさんの両肩を掴んで揺さぶった。
「なんで!!!!!なにが!!!なにが手遅れなの!!???ナナシなにやったの!!!!ねぇ!!!」
「だって!!!!!!」

44 本当にあった怖い名無し sage 2008/05/06(火) 14:34:23 ID:LoVTQL1f0
「 そ こ に お ば さ ん い る ん だ も ん ! ! ! ! ! !

アキヤマさんがそう言って指差した先を見て、僕は全身に鳥肌が立つのを覚えた。
言葉がなにも出てこなくて、嗚咽のようなものが漏れた。
そこには、確かに女の人がいた。ラピュタのロボット兵のように手を垂らして、
顔はうなだれていて、真っ白いパジャマを着ていた。そして、ゆっくり伏せてい
た顔をあげて。
グチャグチャに潰れた頭をコキッと横に曲げて、目を見開いて、ニカッと笑った。
「うぁあぁっ!!!!!」
俺は叫んで後ずさった。アキヤマさんは指差したまま笑っていた。
怖い怖い怖い怖い怖い。それしか頭に無かった。以前にもナナシの家で見たはず
なのに、全く雰囲気が違う。気持ち悪いとしか言い様が無かった。
「キョウスケぇ、どうして逃げるのお?ママ、悲しいなあ?」

おばさんがニタニタ笑いながらこちらに向かってくる。キョウスケ、は、ナナシ
の名前だ。おばさんは僕らをナナシだと思ってるんだろうか。
「ちが、僕は、ちが」
「キョウスケぇえぇええっ!!!????!!」
おばさんが走ってきた。嫌だ。気持ち悪い。気持ち悪い。嫌だ。
「いやだぁああっ!!!!」
目を瞑った、そのとき。なにかが燃えるような音がした。顔を上げると、おばさ
んが燃えていた。否、炎の中に消えたとでも言うのだろうか、しかしその炎も消
えていた。
「なに、いま、の…」
惚けていると、何かに腕を掴まれた。振り向くと、アキヤマさんだった。さっき
までと違いハッキリした表情を浮かべているがすごく青ざめていた。
「ナナシんとこ、行こう。ヤバイ。」

45 本当にあった怖い名無し sage 2008/05/06(火) 14:36:16 ID:LoVTQL1f0
アキヤマさんは言った。僕も同感だった。僕らは手を取り病院を出て、ナナシの
家に向かった。どのくらい時間が過ぎていたのか、あたりはもう暗かった。

チャリを飛ばしてナナシの家に向かった。後ろにいるアキヤマさんはずっと無言
だった。僕も何も言えなかった。
やっとナナシのバカでかい家の前まできたとき、何か嫌な匂いがした。焦げ臭い
匂いだ。
「ナナシ!!!???ナナシいる!!!!??」
僕はドアに手を掛けた。すると、鍵は掛かっておらずすんなり開いた。
不法侵入だの何だの何も考えず中に入ってあたりを見回した。ナナシはいない。
匂いのもとはどこだろう?そう思っていたとき、
「…よお?」
後ろから声を掛けられた。振り向くと、そこには、ナナシがいた。いつものヘラ
ヘラした笑顔、と、片手に大きな斧。
「な、なし、何して…」
「どうしたんだよ二人して、なあ?」
ナナシは笑った。でも目はぜんっぜん笑って無かった。イッちゃった表情?とい
うのか、知らない人みたいだった。そして、気付いた。ナナシの後ろの部屋から、
煙が立ち上ぼっているのに。
慌ててナナシを押し退けて部屋を見ると、そこはもう真っ白だった。薄く見える、
グチャグチャに潰された仏壇らしきものと、赤い炎。
「ナナシっ…お前、」
「母さんを殺したんだ。」
僕を遮って、ナナシは言った。
「母さん、俺のこと殴るから。優しいんだよ?優しいけど、殴るから。親父の悪
口言いながら、殴るから。殺したんだ。でも、母さんいなくなったら、俺、誰も
いなくてさ。」
ナナシは楽しい思い出でも語るかのように笑って言った。

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