Categories: 洒落怖

復讐

この怖い話は約 3 分で読めます。

でも、もう遅すぎた。加害者はやってはいけない事をした。
私が彼に恋したのは、地面を這う蟻ですらも、ふんではかわいそうと下をみて歩く、
そういう純粋な優しさがクラスどころか学年に一人位しかいなかったところだ。
でも彼は、以後下をみて歩かなくなった。
彼は蟻を何匹踏み殺したろう。

644 642 sage 2008/01/03(木) 11:30:46 ID:Wl3hyzG/0
私は、真実を語るべきではないかと、ママに相談した。
しかし、けっしてしゃべっては駄目だとママは言った。
今は私も理解できる、一度壊された人間の心はもう元には戻らない。
あれほど優しかった彼が、こうならざるをえなかったからには、彼には復讐を遂げる権利はある。
ただ、ママの考えは多分私とは違ったのだろう。

その後そのイジメッ子達は小学校の頃の悪行を理由に、
エスカレーター式の母校を相次いで退学になったが。
それは彼の責任ではないと思っている。
なぜなら、掘り返される理由は他でもない本人が-正確にはそうともいいきれないが-作り出していたし、
それに彼の嘘は、彼が心身に受けた傷の万分の一にもならないと私は今でも思ってる。

けれども、最後の一人が高校一年の頃、煙草所持一回で(他は一度目は有限停学 二度目は無期停学-復学あり- 三度目で退学)退学となった時。
退学処分を言い渡されるだけのために、親とともに学校にきていた様子を、遠巻きに観察していた、彼の表情は忘れない。
歯をむき出しに、目を爛々と輝かせ、嘲りの笑みはまさしく悪魔そのものだった。

ここまで書くと私の事を、ストーカーだと思うだろう。
そう、私はストーカー。
思いを告げようと思った相手が殺されて、中身が別のバケモノになって。
それでも、元に戻らないかと初恋をそのときまでずっとひきずっていた。
でもあの表情を見たとき、それは土台無理なんだと悟った。
一週間学校を休んで毎日泣き腫らした。
ママは、小学生の頃のように私を慰めてくれた。

彼は、役目を終えたというように。高校二年の頃から成績を維持する努力を放棄し。
大学への進学は諦めた。

646 642 sage 2008/01/03(木) 11:44:36 ID:Wl3hyzG/0
私が彼と再会したのは、大学を卒業し、家族を持った後。
元担任の家でおこなわれた小学校の同窓会に出た時だ。
なぜなら、彼の復讐はまだ終わっていなかったからだ。
だからそれまでの同窓会も毎回出席していた。

そして、軽く飲んだ酒で寄ってしまい、担任の家の庭で酔いを醒ましている時、彼が目に入った。
長い袋のようなものを背負い、剣道の防具をいれる袋を背負っていた。
彼は凄く上機嫌で口笛を吹いていた。
曲は賛美歌第ニ編191番 だった。
私が中学高校と所属していた聖歌隊で、よく歌っていた曲だった。

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