Categories: 洒落怖

Uの憂鬱

この怖い話は約 3 分で読めます。

332 1/5 sage 2008/10/28(火) 18:28:00 ID:2eXbVfX40
まとめたのだが、長くなってしまった。いくつかあるネタのうちで、
やはり切欠のようなものがいいとチョイスしたのだが、恐怖度は低めかもしれない。

—————-

怖いもの知らずの友人Sが、肝試し行こうぜ、と僕を誘った。
この友人Sというのは、小学校の時から知っているいわゆる幼馴染なのだが、
あらゆる意味で怖いもの知らずで、クラスに一人はいる「無茶をする奴」だ。

別々の高校・大学に進学しても、友人Sと僕にはつきあいがあり、週一ぐらいで
飲んだりつるんだりしている。

くだんの肝試しには、Sと僕と、もう一人、
僕のバイト仲間で、フリーターのUも一緒に行くことになった。

Uと友人Sとの間に面識はなかったのだが、Sの誘いが「今から行こうぜ!」式の
かなり急なものであったため、「それなら今Uと遊んでるから……」と、
一緒することになったのだった。

飲み屋からSの家に行くと、Sの家の前に見慣れぬ車がとまっている。
どうやら、免許を取って車を買ったので、それを自慢したいがために
企画した「肝試し」であったらしい。

Uは無口で愛想がなく、一見ただの暗い人だ。
しかし実は重度の内気、人見知りなだけで、親しくなるとやや無口気味程度の人だった。

飲み屋から直行したために、僕もUも少し酔っていた。
特にUの方はややフラフラするほど酔っていて、飲み屋からSの家までの道中、
鼻歌まで歌っている始末であったため、大丈夫かコイツと思ったのを覚えている。
普段無口で暗い反動か、酒が入ると愉快な笑い上戸に変貌するのがUの常だった。

333 2/5 sage 2008/10/28(火) 18:28:32 ID:2eXbVfX40
しかし、酒が過ぎたのか、歩いているうちに酔いがさらに回ったのか、
Sの家につくころには、Uの顔色は、夜目にも紙のように白くなっていた。
さっきまでの上機嫌はどこへやら、普段以上の無口さになっている。

いざ車に乗り込むと、Uはぐったりしているばかりで、まったくしゃべらない。
Uだけ帰した方がいいかと思って尋ねてみるが、返事がはっきりしない。

車が走り出してしばらくすると、Uは眠りはじめた。
後部座席で寝ているUの様子を、横目で伺いつつ、僕とSは小声で話をはじめた。

今から行く肝試しスポットとは、市内どころか県内でも割と有名なスポットで、
A公園というところだ。
戦国時代に城があったのだが、今ではそのことを書いた看板が立っているだけの、
木とか芝生しかない公園である。

A公園にはお決まりの怪談がいくつかあり、処刑された侍の幽霊が出るとか、
乳母の霊が出るとか、いろいろ噂されている。

Sはデジカメ持参で、「絶対に幽霊を撮る」と息巻いていた。
僕は幽霊とか、そういうものをあまり信じていなかったので、
「ハイハイ」程度で流した。
それよりも、免許を取り立てのSの運転がやたらと荒っぽく、
狭くてくねった道を通っているのにもかかわらず、スピードを出しすぎているのが
気になっていた。
「安全運転しよーぜ」と言うと、Sは窓に垂れ下がっている交通安全のお守りを
得意げに指さし、「大丈夫だって」と言うだけ。

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