Categories: 洒落怖

Uの憂鬱

この怖い話は約 3 分で読めます。

その時、突然Uが目を醒まして、「車をとめて」と言い出した。
様子が切羽詰っていたので、吐くんだな、と思った僕とSは、もちろん
慌てて車を路傍に寄せた。

334 3/5 sage 2008/10/28(火) 18:29:01 ID:2eXbVfX40
Uは車がとまるかとまらないかの時には、もうドアを開けて外に飛び出し、
案の定嘔吐を開始した。

一通り吐き終わると、Uは「ごめん、もう大丈夫」と言ったが、
相変わらず具合が悪そうだった。
Sは「じゃあA公園行こうかー」などとかなり呑気だった。
僕が再度、「帰った方がいいんじゃね?」とUに尋ねると、彼は頷き、
「悪いけど、俺だけでいいから、一度送ってくれないかな?」と言った。

じゃあUを家まで送って、再出発するか、と言うことになった。

引き返す道すがら、Uは今度は眠らずに、青い顔をしてじっと黙っていた。
普段はいくら無口と言ってももう少ししゃべるのだが、
Sが知らない人であること、具合が悪いこともあって、黙っているのだろうと思った。

Uのアパートに着いた時、「ちょっとなんか飲んでけば?」とUに誘われた。

具合が悪いんだったら、一人で静かに寝てた方がいいのに、と僕は遠慮しかけたし、
SはSで、早くA公園に行きたいらしく渋っている。

が、Uは「寄っていけ」とあくまでしつこく誘う。
くだんのA公園には車で30分もあれば余裕で着くので、「それなら……」と、
押される形でUの家に上がることになった。

Sは強引に誘われたことに不満げで、部屋に入ってもまだぶすっとしている。
Uはと言えば、突然元気を取り戻したように傍目にも言動が明るい。

ジュースと酒を用意して、全員席についたところで、Uが真面目な顔をして、
奇妙なことを言い出した。

335 4/5 sage 2008/10/28(火) 18:29:30 ID:2eXbVfX40
「こんなことを言うのはどうかと思うけど、あの車、早く手放した方がいいよ」

当然、Sも俺も「???」となった。
ややあって、Sが「なんで?」と言った。
Uは言うのを少し躊躇ったようだったが、意を決したように、

「あの車、人を殺してるよ」

と、とんでもないことを言った。
Sはぽかんとしていた。
俺は一瞬なにを言われたかわからず、続いて、「えっ!?」とショックを受けた。
しかも、Sまでとんでもないことを言い出した。

「な、なんであの車が中古の事故車両だって知ってんの?」

その時の僕の驚愕はわかっていただけると思う。正直、
「おおおおおおおおおおおい!!11!」と言う感じだった。

Sは知り合いの伝手をたどって、
新車同然の車をかなり安い値段で手に入れたのだった。
どうやら前の持ち主が死亡事故を起こしたらしい。
横断歩道を渡っている子供に突っ込んではねたのだ。
Sは「安ければいいよ!」と大して気にしなかったらしい。

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