Categories: 洒落怖

窓を超える老婆

この怖い話は約 3 分で読めます。

え?ここに人が住んでるの?屋根も壁もボロボロだし、窓にガラスも入ってない。
もしかして野犬?こっちは狂犬病が多いと聞いていたのを思い出し、途端に怖くなった。
すると「ぐぅぇぇ・・・」という声が家の中から聞こえた。え?え?と俺は凝視モードに入った。
ガラスのない窓枠に、屋内から枯れ枝のような手がぶら下がっているのが見えた。爪が異様に長い。
魅入られたように見ていると、窓の下からばさばさの白髪が現れ、
ゆっくりと、しわくちゃの婆さんが顔を半分のぞかせた。

その婆さんの目は、病気なのかなんなのか、白い半透明の膜みたいものがあって黒目がはっきり見えない。
恐ろしさがこみ上げて来て、俺は工場の方へ走り出した。
途端にガッ!と肩を掴まれた感触があった。そりゃもう、必死で走って帰ったよ。
守衛が驚いたように俺を見ていたがそれどころではなく、自分の部屋に転がり込んでへたり込んだ。

519 窓を越える老婆3/7 sage 2009/08/18(火) 17:35:52 ID:D+dB/6oU0
あの婆さんはなんだ?普通に住んでる人だったのか?しかしあんなボロ家に?
もしそうで、病気だったんなら、走って逃げて気を悪くしただろうか?あっ、見えてないのか。
などど、心臓バクバク状態であれこれ考えた。そういえば、肩を掴まれた感触が??
と思って、Tシャツをずらして肩を見てみると、細い三日月のような赤いスジが3つ並んでる。と、反対側に1つ・・・
あの婆さんは人じゃないのか!?って震えた。

夕食時、王さんが「よく休めましたか?」と聞いてきた。
俺は、ボロ家で見たことを話そうかと思ったけど、怒られそうなので「うん」と曖昧に答えておいた。
その晩も王さんが部屋にやって来て、あれこれ話して過ごし、婆さんと肩の傷のことは忘れかけていた。
王さんも自室に戻り、風呂でも入ろうと空きベッドに広げておいたスーツケースから
着替えを出そうとかがみこんだ。その時ちょうど後ろ側にある、開けていた窓のほうで
ガリッ、て音がしたんだ。ん?なんだ?と一瞬思い固まったが、もう音はない。
気のせいかと着替えをあさっていると、またガリッ、ガリッという音がした。
俺はかがみこんで着替えをつかんだまま、恐怖で固まった。見てはいけない、見てはいけない!
どれほど固まっていただろうか。怖くて全く動けなかったんだ。
が、「ぐぅぇぇ・・・」という声が聞こえて、俺は気が狂ったように振り向いた。

俺の部屋の窓枠に、外からしわくちゃの手、長い爪がしがみついてたんだ。
そしてぼさぼさの白髪と、膜がかかったような目がだんだん見えてきた。
昼間は半分しか見えなかった顔が、ゆっくりと、全部現れてきた。
土気色のしわくちゃ顔に、線を引いたような薄い唇だけが真っ赤だった。
俺が動けなくて凝視していると、婆さんが突然ヒラリというか、ふわっというか、急に窓枠の上に上がって来たんだ。
そこで俺は弾かれたように立ち上がって、なんか叫びながら、転げるようにして部屋から出た。

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