Categories: 洒落怖

侵入

この怖い話は約 3 分で読めます。

276 本当にあった怖い名無し sage 2009/07/31(金) 00:43:46 ID:rdvrKJi/0
あまり怖くないかも知れないが、拭い去りたい記憶なので、暇潰しのお付き合いを。

ずっと昔のことなんだけど、一人である海辺の町に旅行したことがある。
時期的に海水浴の季節も過ぎていて、民宿には俺以外客はおらず、静かな晩だった。
俺は缶ビール片手に夜の浜辺に出て、道路と浜辺を繋ぐコンクリートの階段に座り、
海から吹く潮風を浴びながら、波音だけを繰り返す暗い海を見つめていた。
それまでの生活で色々イヤなことがあって、センチメンタルな気持ちであれこれ考えていた。
その時、波打ち際に黒っぽい固まりのような物が流れ着いていることに気付いた。
でかい魚か何かかな、と思って気楽な考えでその黒っぽい固まりに近づいたんだ。
潮風に混じって腐ったような臭いがして、その正体に気付いた。それは溺死体だった。
警察呼ばなきゃ。いや、まずは民宿に知らせた方がいいかな。
当時は今みたいな携帯電話もなく、公衆電話の場所も知らない海岸なので、俺はどうすべきか迷った。

277 本当にあった怖い名無し sage 2009/07/31(金) 00:44:50 ID:rdvrKJi/0
その時、その溺死体が起きあがったのだ。全身からボタボタとよく分からない物を落としながら、
動くはずのない溺死体が俺の方へ向けて意外なほどの速さで歩き始めたのだ。
正直な話、俺は肝を潰した。ついでに腰も抜かして砂浜に座り込んだ。
道路の街灯に照らされたそいつのあちこちから、腐った肉片やら色んな小生物がこぼれ落ちている。
カニやらエビやらいたのかも知れないが、一番鮮明に覚えているのは砂浜の上で跳ねる小魚だった。
そいつが俺の前に立った。そしてパニックで動けないでいる俺の口をヌルヌルした指で強引に開き、
髪の毛がまばらにしか残っていないグチョグチョした頭を俺の口の中へ押し込んだのだ。
一体どういう仕組みなのか分からないが、頭どころか腕も肩も俺の口の中に入った。
ひんやりした感触が喉の奥を通り、腹の底へ溜まっていくのが感じられた。
時折固い物があった気もするが、骨ではなく、何かの甲殻類だったのだろうか。
その時の臭いについての記憶がないのも恐怖で呼吸が止まっていたためなのかも知れない。
そいつは物理的法則を無視してズルズルヌメヌメと俺の中へ入っていく。
腰辺りまで入った所で俺は我に返り、必死で抵抗した。とにかく暴れ回った。
覚えているのはそいつの内部の感触で、骨らしい骨もなく、豆腐みたいな感覚だった。
ものすごい腐臭を感じた。口を閉じたいが閉じられない。舌を動かせば微妙に酸っぱい味がした。
どこまで暴れたか覚えていない。いつの間にか俺の記憶は途切れていた。気を失ったのだろう。

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