Categories: 洒落怖

深夜のツーリング

この怖い話は約 3 分で読めます。

626 深夜のツーリング(1/5) sage 2009/06/09(火) 12:24:11 ID:8/xgvKzj0
今から10年以上前に、先輩から半年間預かっていたバイクで、
夜のドライブへ出かけたときの恐怖体験を書かせて頂こうと思う。
少し長文になってしまったので何度かに分けて投稿します。

千葉市から出発して勝浦市へ着いたのは、深夜2時を少し回った頃だった。
行きは車通りの多い幹線道路を使って行ったので、
同じ方面へ行く車や、対向車とも頻繁にすれ違っていたのだが、
帰りは敢えて車通りの少ない山道を選んで帰ることにした。

勝浦から鴨川方面へ抜ける国道をのんびり走り、
天津小湊の辺りから県道81号線へ入る。

この道はすべてが舗装されているのだが、
ちょっとした山道や林道のような細い道を抜けていくので、
バイクで走るのはとても楽しいのだ。
それまで昼間の明るい時間帯には何度も利用していたお気に入りのコースだった。

今では幅の広い立派なトンネルが出来たらしいのだが、
俺が利用していた当時は文字通り手堀り風の狭いトンネルしかなく、
深夜にそこを通るのはもの凄く恐ろしかった。

ちょっと大きな車なら天井や側面をこすってしまいそうなイメージの
非常に狭いそのトンネルは照明も十分ではなく、
例え事故を起こしても翌朝まで誰も気が付いてはくれないような場所にあるのだ。

それまで俺は幽霊のようなものを一度も見たことがなかったし、
また成人するまでに見たことがなければ、
その後見ることもないと言うような話も聞いていたので、
心霊的な意味での夜道の恐怖というものを微塵も感じてはいなかったのだが、
あそこのトンネルなら出てもおかしくはないかもしれないと考えていた。
だから、その場所を平然と抜けられるかどうかだけを気にかけていたと思う。

627 深夜のツーリング(2/5) sage 2009/06/09(火) 12:24:52 ID:8/xgvKzj0
そんな矢先のことだった。
トンネルまではほど遠い、グネグネ曲がりくねった狭い道を通り抜け、
土砂崩れを修復しているような極端に狭められた道を越えた先に、
30m程の直線が現れた。

ハイビームにしたヘッドライトが突き当たりに橋の欄干を照らし出す。
この橋を見た瞬間、何か強烈に嫌な予感が襲ってきたのだ。
パニックブレーキのような強烈な急ブレーキを無意識のうちにかけていた。
路面がやや濡れていたので後輪がスライドしながらも、バイクは最短距離で停止した。
ヘッドライトの照度がやや落ち、アイドリングのリズムに合わせて明暗を繰り返す。

その先にぼんやりと浮かび上がる道は、橋の直前でグイッと右に折れているため、
自分の位置からは橋を横から見るような形になっている。
その橋は右奥のほうへ延び、林の陰になっているのでほんの一部しか見ることができない。
照度が落ちたとは言え、ヘッドライトが照らし出す範囲は、
まるでフラッシュを焚いたかのような明るさに満ちている。
反面その範囲の外は漆黒の闇に包まれていて、
生きた人間の進入を拒むかのような暗黒の世界が広がっていた。

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