Categories: 洒落怖

深夜のツーリング

この怖い話は約 3 分で読めます。

この橋の直前までは薄暗い街灯が適度な間隔で配置されていたのだが、
なぜかこの橋の部分は街灯の明かりがまるで見えない。
街灯が球切れしているのだろうか?

立ち止まって嫌な予感の原因を探ってみたのだが、
街灯の明かりが見えない以外には特に不自然な部分があるわけでもなかった。
気を取り直してギアを1足に入れ、クラッチをつなぐ。
ソロソロと走り始めると、やはり圧倒的な拒絶感が生じて前に進めない。
もう一度停車してみたものの、相変わらず見える範囲には何も無い。

628 深夜のツーリング(3/5) sage 2009/06/09(火) 12:25:35 ID:8/xgvKzj0
ふと腕時計に目を落とすと深夜2時30分を越えた辺りになっている。
Uターンして元来た道を帰ることも考えたのだが、
下り坂であると同時に道がかなり細いため、
バイクといえども何度か切り返さなければUターン出来そうにない。
何より、そんなところでモタモタするのは何となく嫌な気がしたのだ。

今では体が全力でこの場を離れたいと悲鳴を上げているように感じられた。
本能的な嫌悪感を無視して再度ギアを入れ、一気に突き進む。
橋に近づくにつれ、その全体像が明らかになってくる。
しかし何もおかしな物は見えなかった。
拍子抜けして一気に橋を渡り、渡りきったところで一端停車して振り返る。
やはり何もない。

しばらくその場にとどまって様子を見ていたのだが、
それまでに感じていた胸騒ぎは一体何だったのだろうと安堵しながら前へ向き直り、
もう一度バックミラーで真っ暗な後方を確認していると、
突然自分の正面の方で何か白い物がスッと動くのに気が付いた。

ゾクリとしながら慌ててそちらを見ようとした瞬間、エンジンがストール。
ヘッドライトが正面の白い何かを捉えたまま急速に消えていく。
俺はあまりの出来事に恐怖の叫び声を上げながらパニックに陥った。

他のバイクはわからないが、俺が借りていたバイクはエンジンが停止すると
引きずられてヘッドライトが消灯する仕組みになっていたので、
完全な闇に包まれたのだ。

手探りでキックスターターのペダルを捜し当て、狂ったようにエンジンをかける。
一回、二回、三回…。

629 深夜のツーリング(4/5) sage 2009/06/09(火) 12:26:17 ID:8/xgvKzj0
ドルルンという虚しい音だけが周囲に響き、一向にエンジンのかかる気配が無い。
しかしキックと同時に一瞬ヘッドライトが薄暗く点灯し、
その先に何か白い服を着た人の輪郭がぼんやりと見えている。
5~6m程度先だろうか。

白っぽいワンピースのような服を着た、髪の長い女性の後ろ姿であることがわかった。
それを正面に見据えつつ『何でかからないんだよ~!』と心の中で叫びながら、
少しアクセルを開けて、もう一度強くキックする。

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