Categories: 洒落怖

先客

この怖い話は約 3 分で読めます。

建設機械置き場に近づいたので、財布からタクシー代を出そうと
していると運転手が言った。
『お客さん、××重機の人?』

お節介な運転手だな、いったい何が言いたいのだろうか?

「いいえ。違いますよ」

と強く言うと、何とタクシーは建設機械置き場を通過して行く。
ビックリしてM子さんは

「ああ、ここです、ここで・・・」

433 先客4/5 sage New! 2009/05/28(木) 19:14:28 ID:1ml7x3Fa0
「運転手さん、ここで良いですよ!」
ムッとしたM子さんが言うと、運転手は走りながら
『お客さん、火曜日にも乗ったでしょ?』と言った。

そういう間にどんどん走って行く。確かに今週はタクシーを
毎晩使ったが、それがどうしたんだろうか?
訳が分からず固まってしまったM子さん。
2~3分たったろうか、国道を走るとコンビニの灯りが見えて
タクシーは駐車場へ入った。
タクシーを止めると、後ろを振り向いて運転手が言った。

『ごめんなさい、お客さん。でもちょっとあれはねェ・・』

運転手は名刺を取り出し、会社の電話番号はここにあるので
苦情が有れば私の名前を言って、電話して構わないから、と
前置きして言った。

火曜日にM子さんを載せたのは、このタクシーだった。
初めは気が付かなかったのだが、例の××重機という名前で
思い出したのだそうだ。

434 先客5/5 sage New! 2009/05/28(木) 19:15:19 ID:1ml7x3Fa0
『実は、お客さんの前に、男を乗せたんだけどね』

M子さんを追い越して行ったサラリーマンだ。

『その男がね、××重機で降りたんだよ』

タクシーの中で、男は携帯で電話していた。
(もうすぐ付くから)とか(何分後だ)とか話していたのだという。
そう言えば、運転手はしきりに夜勤がどうの、××重機がどうの
と言っていたのを思い出したが、なぜここまで通り過ぎたのかが
分からない。M子さんが尋ねると

『お客さんは、××重機の人じゃなさそうだし、火曜日もここまで
来たでしょ。まあ良いか、とは思ったんだけどね』

××重機の事務所は電気点いてないし、あの男もここの社員じゃない
んだろうなぁとボンヤリ考えていたら、道の反対側にワンボックス
が一台停まっていたのに気が付いたのだそうだ。

『4人くらい乗ってたかなぁ。それがライトが当たるとね、サッと
隠れたんだよ。あやしいだろう。しかも運転席に居たのは
間違いなくあの男だったからねェ、何かあっても俺も怖いし』

M子さんは携帯で母親に話したのを思いだしてゾッとした。

(うん・・今駅。タクシーに乗るから・・××重機まで・・)

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