Categories: 洒落怖

亡者

この怖い話は約 3 分で読めます。

(続く)

510 本当にあった怖い名無し New! 2009/05/17(日) 02:25:32 ID:rJFtDwh60
一人でじっと息を殺してソファの影に隠れていると、恐怖感に押しつぶされそうになります。
先ほどからそのモノの動きが感じられなくなっています。
警備会社が気づいているならもう来ているはず、つまりセキュリティーはダメ。
ドアの無いこの部屋で電話もダメです。
なら、自力で逃げるしかない。
逃げ道は仮眠室の入り口を出れば、数歩で事務室から階段につながる廊下に出れます。

意を決して静かにドアに近づきそっと事務室を覗いてみると、
そこには青白い影がざっと5体いました。
3体ほどは事務室奥の社長室のドアの前にたたずみ、
2体は目の前正面およそ3メートルほどの位置にいます。
顔かたちなどはわかりませんが明らかにこちらを意識していると感じます。
その瞬間、こちらに気づいていない強盗から走って逃げようとしていた意思がポッキリ折れました。
体中の力が抜けその場に立ち尽くしてしまいました。
その二体の影が徐々に近づいてきます。
怖さのあまりその場にしゃがみこみ意識を失う(眠りこむ?)までの間、
左手首にある祖父からもらったお守りの小さな数珠に右手を伸ばすのが精一杯で、
教わった般若心経をとなえることなど思いつきもしませんでした。

(続く)

511 本当にあった怖い名無し New! 2009/05/17(日) 02:28:50 ID:rJFtDwh60
どれぐらい経ったか、電気音とともに事務室の照明がつき気がつきました。
その数分後、腰が抜けてしゃがみこんでいる私を、朝の早い同僚のT君が見つけてくれ、
まだ混乱している私をW君がとりあえずアパートまで届けてくれました。
その日は社長のすすめで休ませてもらったのですが、
夕方に社長からの電話で近所の飲み屋で話があるとの連絡がありました。

飲み屋には私のスクーターが止まっていて、社員(6人)が勢ぞろいしています。
彼らは何だかわからないけど私を元気づけることが目的で集まってくれたらしいのですが、
私の話を聞いて幾人かは唖然としています。
が、社長以下数人は目配せをしています。というより、社長をにらんでいます。

手短にお話しすると。
一階の倉庫に収まっている物品は刀剣類や美術品が主という建前なのですが、
時々は取り立て先の位牌を持ってくる(外資?)業者もあるとのこと。
「見ざる、聞かざる、言わざる」の立場らしいのですが。社員のうち幾人かは数の合わない人の気配がするので、
早朝出勤と残業は避けているとのことなどの不満が噴出。飲み会は社長糾弾の席となりました。

翌日、倉庫の中を調べてみると、大きな木の箱の中に立派なお仏壇が入っていました。
中の位牌などは運搬中にひっくり返っていて目も当てられない状態で、
さすがに大慌てでその業者に引き取ってもらいました。
ただ、今にしてみるとあの青白い影達から害意は感じませんでした。
見知らぬ場所につれてこられ戸惑っていたのでしょうか。
それにしても、げに恐ろしきは恐れを知らない金の亡者ということですね。

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