Categories: 洒落怖

トラップ

この怖い話は約 3 分で読めます。

俺と友人は悩んだ。
警察に行くべきか。
しかし、受験を控える中学生。
特に友人は偏差値が高かったので、良い高校に行く。こんなことが公になると進学どころの騒ぎではない。
このことは二人だけの秘密、お互い墓まで持って行く。そう決めた。

だがそこからが大変だった。
人を殺した、その感情がいつも心の片隅にあった。
兄を亡くした同級生の姿を見るたびに心が痛んだ。
辛かった。
自殺も考えた。全部話そうかとも思った。
だができなかった。いえなかった。

300 本当にあった怖い名無し sage New! 2009/05/03(日) 00:39:42 ID:gWs0BYuR0
あの事件後、友人とは疎遠になった。一緒だと思い出す、当然か。
俺は受験勉強に励んだ。いや、受験勉強に逃げていただけ、だろう。
そして、元の成績からはとてもいけなかった高校に受かることができた。

すべてを忘れたかった。
新しい学生生活で、すべてがリセットされ、楽しく過ごせる。
そう思った。
入学式で彼女がいた。俺たちが殺した兄をもつ、同級生。
しかも、同じクラス。

逃げ切れない。
心が折れかけた。折れていたかもしれない。

同じ中学出身で同じ高校で同じクラス、話さない理由はない。
これまでは避けてきたが、自然に話すことになってしまった。
というより家の方向も同じせいか結構仲良くなってしまった。

301 本当にあった怖い名無し sage New! 2009/05/03(日) 00:42:02 ID:gWs0BYuR0
そんなある日彼女は言った。
「瀧本君は知ってると思うけど私のお兄ちゃん、死んじゃったの」
ああ、知ってる。殺ったのは俺だ。
「中学では結構噂になったもんね、でねここからは知らないと思うんだけど」
「お兄ちゃん、幽霊屋敷で落とし穴に落ちて死んだんだって・・・」
知ってるよ。犯人も。
「落とし穴の中に包丁がいっぱい入ってたんだ・・・」
「でもね、犯人捕まってないんだよね・・・」

静かに聞いていたがそのとき、つい言ってしまった。
「えっ!包丁!?」
彼女の顔が曇った。
沈黙が続く・・・彼女は
「用事があるから帰るね」
と言い帰ってしまった。

それから、彼女は一度も俺に話かけてこない。

後日、別の友人も彼女は兄の話をされたらしい。
彼女は最後に
「廃屋の隣のおばさんが落とし穴を掘る二人の学生」を目撃していたことを言っていたらしい。

ごめん、吉倉、墓まで持って行けなかった。

作り話です。

Page: 1 2

bronco

View Comments

Share
Published by
bronco

Recent Posts

迷い

霊とかとは全然関係ない話なんだ…

4年 ago

血雪

全国的にずいぶん雪がふったね。…

4年 ago

母親の影

私が小6の時の夏休み、薄暗い明…

4年 ago

閉じ込められる

彼はエレベーターの管理、修理を…

4年 ago

彼女からの電話

もう4年くらい経つのかな・・・…

4年 ago

テープレコーダー

ある男が一人で登山に出かけたま…

4年 ago