Categories: 洒落怖

人形騒動

この怖い話は約 3 分で読めます。

天井を仰ぐ。蒸し暑くて寝られたもんじゃなかった。
僕はエアコンをつけようと、机の上にあったリモコンを取るために、ベッドから起き上がった。ふいに、違和感に気づいた。

642 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/09/04(日) 15:46:15.10 ID:Fz2g+GSN0
(・・・誰かに見られているのか)
多分、視線の主はベランダにつながるカーテンの向こうに居る。
別に、よくあることだと自分に言い聞かせ、平常心を保ってカーテンを少し開けて覗いた。髪の長い、顔が青白い女だった。
大した代物じゃないと判断した僕は、ベランダに出て「オル゛アァ!!」と叫んだ。大抵のものは気力で押しのける。これに限る。
予想通りに女が消えるのを確認した僕は、やっと眠りにつける安心で、エアコンをつけることを忘れたまま、ベッドへと入った。

これで終わりと思ったのが間違いだった。その日を境に、毎日毎日女はベランダに立ち不気味な視線を僕に向けるのだった。
原因は明らかにあの人形なわけで、早く持って帰ってくれよ・・・と願うものの、日に日に女はベランダから窓までの距離を詰めてくる。
そして金曜日の夜にはめでたくも、べったりと顔を窓に付けて、カリカリをガラスを引っ掻くわ、「返して・・・返して・・・」なんて呟いてくるわで、
結果的に僕は寝不足になってしまった。

 土曜日の朝、寝不足で死んでしまうのではないか・・・と危険を感じた僕は、近所にある馴染みの寺にかけこむことにした。
両手じゃ数えきれない程に世話になってきた寺だ。そこには僕が破戒僧、と言わしめる人物が居る

644 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/09/04(日) 15:47:50.51 ID:Fz2g+GSN0
「よお、久しぶり。部活と宿題で死んでるのかと」
この人だ。また宿題なんて嫌なことを思い出させやがって・・・と言おうと思ったが、そんな暇はない。

「お盆にね、親戚が集まったんですけど、まあ色々あって人形に酷い目に遭わされてるんですよ」
「ふーん、で、その人形は?」
ああ、しまった・・・と思った。うっかり問題の人形を忘れてしまったのだ。
僕はけっこう間抜けで、こういうことがよくあった。しかし、家に帰って持ってくるのは面倒くさい。

「別に構わんよ。大体予想はつく」
くっくっく・・・とむかつく笑い方をする相手には腹が立ったが、この人にはそんな態度は取ってはいけない。

「なにさ、まあ詳しいことは事務所で聞こうじゃないか」
 その事務所というのは、ちゃんと寺の中にある。どこの寺でもそうなのかは知らないが、経理の為の場所や生活スペースのような場所がある。
本堂とはまた違ったところに建てられたそこは、いつも僕が坊主と雑談をしたり、まあ、色んなことに使う、いつもの建物なのだ。

645 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/09/04(日) 15:49:32.40 ID:Fz2g+GSN0
 事務所に入ると、適当な椅子に座り、坊主と向かい合った。
「また美人なのを連れてきたな、お前は」
「ええ、今後ろに居るんですか?」
「いや、お前んちだけど」
なんで人の家が見えるんだよ・・・なんて突っ込みは、この人には無用だ。
普段、何をやっているのか見当もつかないのだから。

Page: 1 2 3

bronco

Share
Published by
bronco

Recent Posts

迷い

霊とかとは全然関係ない話なんだ…

4年 ago

血雪

全国的にずいぶん雪がふったね。…

4年 ago

母親の影

私が小6の時の夏休み、薄暗い明…

4年 ago

閉じ込められる

彼はエレベーターの管理、修理を…

4年 ago

彼女からの電話

もう4年くらい経つのかな・・・…

4年 ago

テープレコーダー

ある男が一人で登山に出かけたま…

4年 ago