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天井を仰ぐ。蒸し暑くて寝られたもんじゃなかった。
僕はエアコンをつけようと、机の上にあったリモコンを取るために、ベッドから起き上がった。ふいに、違和感に気づいた。
642 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/09/04(日) 15:46:15.10 ID:Fz2g+GSN0
(・・・誰かに見られているのか)
多分、視線の主はベランダにつながるカーテンの向こうに居る。
別に、よくあることだと自分に言い聞かせ、平常心を保ってカーテンを少し開けて覗いた。髪の長い、顔が青白い女だった。
大した代物じゃないと判断した僕は、ベランダに出て「オル゛アァ!!」と叫んだ。大抵のものは気力で押しのける。これに限る。
予想通りに女が消えるのを確認した僕は、やっと眠りにつける安心で、エアコンをつけることを忘れたまま、ベッドへと入った。
これで終わりと思ったのが間違いだった。その日を境に、毎日毎日女はベランダに立ち不気味な視線を僕に向けるのだった。
原因は明らかにあの人形なわけで、早く持って帰ってくれよ・・・と願うものの、日に日に女はベランダから窓までの距離を詰めてくる。
そして金曜日の夜にはめでたくも、べったりと顔を窓に付けて、カリカリをガラスを引っ掻くわ、「返して・・・返して・・・」なんて呟いてくるわで、
結果的に僕は寝不足になってしまった。
土曜日の朝、寝不足で死んでしまうのではないか・・・と危険を感じた僕は、近所にある馴染みの寺にかけこむことにした。
両手じゃ数えきれない程に世話になってきた寺だ。そこには僕が破戒僧、と言わしめる人物が居る
644 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/09/04(日) 15:47:50.51 ID:Fz2g+GSN0
「よお、久しぶり。部活と宿題で死んでるのかと」
この人だ。また宿題なんて嫌なことを思い出させやがって・・・と言おうと思ったが、そんな暇はない。
「お盆にね、親戚が集まったんですけど、まあ色々あって人形に酷い目に遭わされてるんですよ」
「ふーん、で、その人形は?」
ああ、しまった・・・と思った。うっかり問題の人形を忘れてしまったのだ。
僕はけっこう間抜けで、こういうことがよくあった。しかし、家に帰って持ってくるのは面倒くさい。
「別に構わんよ。大体予想はつく」
くっくっく・・・とむかつく笑い方をする相手には腹が立ったが、この人にはそんな態度は取ってはいけない。
「なにさ、まあ詳しいことは事務所で聞こうじゃないか」
その事務所というのは、ちゃんと寺の中にある。どこの寺でもそうなのかは知らないが、経理の為の場所や生活スペースのような場所がある。
本堂とはまた違ったところに建てられたそこは、いつも僕が坊主と雑談をしたり、まあ、色んなことに使う、いつもの建物なのだ。
645 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/09/04(日) 15:49:32.40 ID:Fz2g+GSN0
事務所に入ると、適当な椅子に座り、坊主と向かい合った。
「また美人なのを連れてきたな、お前は」
「ええ、今後ろに居るんですか?」
「いや、お前んちだけど」
なんで人の家が見えるんだよ・・・なんて突っ込みは、この人には無用だ。
普段、何をやっているのか見当もつかないのだから。