Categories: 洒落怖

手形

この怖い話は約 3 分で読めます。

608 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/10/23(日) 02:48:31.30 ID:/zgmvsKx0

少々尋常ならざる雰囲気をその部屋から感じた俺は友人の知り合いの佐藤さんに声をかけてみた。佐藤さんは、よくこのスレに出てくるような「霊能者」でも「霊感がある人」でもない。
そういうことが好きで人より多くそういう類の本を読んでいたり、人より多くそういう怪しい場所によく行っている、その程度の人だった。身なりも普通だし、性格も穏やか。
変に騒ぎ立てるのも恥ずかしい気がするが誰かには相談したい。だったら佐藤さんかな、と思っただけだった。
話を聞いた佐藤さんが早速見てみたいというので日曜の夕方に家に連れてきてみた。あんまりマジマジとその手形を見るので誰か通ったらどうしようと気が気じゃなかった。

「これ、出ようとしたがっているみたいだよね?この部屋から。」
「出たい?」

「あくまで推測だけど」と断ってから佐藤さんは話し出した。
何者かがこの部屋から出たがっている。今までは以前ここに住んでいる人がなんらかの処置をしていたから動くに動けなかったんじゃあるまいか。
前の住人がこの部屋から出ていく時に、その処置もある程度は残していっただろうからそいつは今でも自由には動けない。でも、何かのはずみで
この窓のところにだけスキが出来てしまったんだと思う。なぜその前の住人がそれを閉じ込めたがったのか。そもそもそいつはいったい何者なのか。
それはわからない。

「じゃあ、大家さんに頼んで一緒に中に入ってみます?」と誘ったものの丁重にお断りされた。
「僕にその勇気はないな。ここ、なんか空気悪いよね。素人の僕でもそのくらいは感じるんだよ。」と言ってそそくさと階段を降りだしたので
慌てて追いかけて、ここまで来てもらったお礼として外で夕ご飯をおごった。佐藤さんはその手の話題が非常に豊富で、ついつい遅くなるまで話を聞き入ってしまった。

その帰り。

609 本当にあった怖い名無し sage New! 2011/10/23(日) 02:57:03.53 ID:6LkCRXrd0
ずいぶん遅くなってしまったので小走りでアパートに戻ると田中さんと一階のポストの前で会った。仕事の帰りだという。
「日曜のこんなに遅くまで大変ですね」「いやぁ、まあね・・・。」なんて話をしながら階段を一緒に上がる。夜遅く、周りがシーンとしていることもあって
201号室の方は見る気になれなかった。それは田中さんも同じようだった。二人でまっすぐ前を向きながらどうでもいい会話を2、3交わした。2階に着いて
「じゃあ」
「あ、はい」
と行って別れる。ポケットからカギを出してドアを開けようとしたが夕方の佐藤さんの話がどうしても気になる。ちょっとだけなら見てもいいかな・・・。
等と思いゆっくり振り返ると先に田中さんの横顔が目に入った。
田中さんは大きく目を見開いて固まったまま一点を凝視していた。視線はおそらく201号室だ。
恐る恐る201号室の方に顔を向ける。何かがおかしい・・・

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