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本堂に入る襖の前で、開けもせずじっと立ち止まった
覗き穴から見た風景だと、少し丸く歪んでいて奥行きがあり、よく状況が分からない
腰を曲げて屈みなおし、覗いてみると女性がくるっと振り返り、こっちに向かってまた歩き出した
その時あれ?と思った
着物が上の方は茶色っぽく、足元は白い ちょうどグラデーションっぽい感じで品がいいなと思った
それが正面から見ると、そのイメージが吹き飛んだ
着物の胸のあたりがなんだか変な模様なんだ 帯も後ろは白かったのに前は着物と同じ茶色
髪も腰まである清楚なロングヘアーだと思ったら、前髪は目が隠れるくらいぼさっとした感じ
廊下は割と明るいからこっちに向かってくるにつれて段々ディテールがはっきりしてくる
本堂と自分の見てる扉の中間くらいに女性が来た時に、これは普通の人じゃない、と確信した
着物の茶色はなにか汚物をまいたみたいに汚れてる状態で、それがお腹くらいまで着物に染み込んでる
髪はぼさぼさで、寝起きみたいに振り乱してる
何より唇が真っ白で、着物の袂から覗く両手が冗談じゃなく青い 死体が歩いてるのかとマジで思った
39 本当にあった怖い名無し sage 2011/08/01(月) 06:58:27.42 ID:9rCttc7T0
その女性が速度を変えず「シュルシュル」とこっちに向かってくる
どうしよう、逃げるべきか誰か呼ぶべきか、それほど長い時間でもないのに恐ろしいくらい脳がフル回転した
でも不思議とこの扉を開けてどうこう、って選択肢は絶対選ばない、と決めた
女性が近づいてきて前髪の間から視線が分かるかな、くらいの距離で俺は顔を上げた
よく考えたら向こうからもこっちが見えるのだ まして扉を開けられたら無防備な状態
気配を悟られないように、そっと指で穴を塞いで、引き戸を開かないように押さえつけた
頼むから開けないでくれ、俺は絶対ここを動かないぞ、と息を止めた
女性の足音が止まって、扉の前で立ち止まってる気配が伝わってくる
いま覗き込んでたら嫌だな、と穴を塞いでる左手の人差し指に意識を持って行ったとたん、右手にぐっと力が入った
女性が扉に手をかけたっぽい
やべえ、と思って力をいれなおし、ぐっと扉を押さえつける
女性は扉を開けようと力をいれてくる 開ける、開けない、の押し問答をひたすら続けてると、扉から音がする
バサ、とかザラ、とか扉に何か当たってる そろそろ右手だけで抑えるのもキツいので覗き穴から左手を離し、両手で押さえると
覗き穴で黒いものがチラチラと見える 髪が扉に当たってるんだ、と思った
女性が頭を振り回しながら扉を開けようと食らいついてる それで髪が扉に当たってバサバサと音を立ててる
冗談じゃねえ、絶対開けるもんかと声が出そうなくらい扉を押さえつけた
40 本当にあった怖い名無し sage 2011/08/01(月) 07:00:14.73 ID:9rCttc7T0
体感時間では15分か30分くらいだったけど、前のめりに扉を押さえてると後ろから声をかけられた
住職さんが「開きませんか?」と様子を見に来た
寝てたはずなのに衣をきちんと着てて、手にはタオルを何枚か抱えてる
扉押さえたまま「あえ?」とか訳の分からん返事をしたら住職さんはすっと扉に近づいて引いた
慌てて俺が扉から離れると、誰もいない電気の点きっぱなしの廊下が続いてた
「鍵が壊れてるのかな、立て付けは悪くないのだけれど」とか住職さんが言いながら、和室側のトイレにタオルを交換に行った
俺は呆然と立ち尽くして廊下を眺めるけど、鳥の声がチュンチュンしてて あれ、もう朝だったのかと思った