Categories: 洒落怖

かっぱの手

この怖い話は約 3 分で読めます。

俺が小学1、2年生くらいだった頃、通学路で普段通る、地下道の天井に
「かっぱの手」と呼ばれる大きなシミがあった。
それは見ると確かに4本指の手のような形をしていて、両端が少し短い。
それが河童の手の特徴なのか、単にそれっぽく見えるというだけなのかよく解らなかったが、
幼心に結構不気味だと思っていた。
そのかっぱの手には、傘で突くと呪われるやら祟られるという噂話があって、
地元の子供の間ではそこそこ有名な名所だった。

雨が降ったある日の下校中、いつもの4人グループでいつものようにその地下道を通ると、
中でも特に体格のいいT君が、例の手を指差して「肝試しをしようぜ」と持ちかけてきた。
「突けなかったやつは荷物(ランドセル)持ちな?」
1人は嫌がっていたが、俺ともう1人の子は割と怖いもの好きなほうなので、その話に乗っかった。
どうせ手の形っぽく見えるだけの、ただのシミだし、祟りなんて実際にあるわけないだろう。
そうは思っても、地下道というのはかなり薄暗く、下校する時間帯の夕暮れ時なんてかなり怖い。
俺を含め3人は、シミと睨み合いつつも逃げ腰で、なかなか行動に移せなかった。
そうこうしているうちに嫌がっていた子が、
「もういいじゃんそんなの・・・早く帰ろうよぉ。どんどん暗くなっちゃうよ・・・」と業を煮やした。
それを皮切りに、T君が思い切って、かっぱの手を傘で突いた。
「・・・やった!俺優勝!」
一度やってしまえばもう気負いしなくなったのか、その後も何度も突いてみせた。
それに興じてもう一人の賛同者も突いてたかもしれないが、よく覚えてない。
俺はこの間傘を壊してしまったばっかりで、母に叱られたのを思い出し、むしろその手のシミより
母親の方が怖くなったのでやめておいた。

597 2/4 sage 2011/02/26(土) 05:59:35.52 ID:OLU5HdFn0
次の日の土曜日、友達の家に遊びに向かう最中、例の地下道のある道に差し掛かると、
そこには、犬の死体が、道路のど真ん中に転がっていた。
首から上が無く、頭の中身と思しきものがグチャグチャに飛び散り、散乱していた。
そのまま放置するには偲びなかったが、あまりにもグロテスクな光景に嫌悪感を覚え、とにかく先を急いだ。
今思えば、業者に連絡したほうが良かったのだろうが、当時はその発想が無かった。
帰宅する頃には、死体は掃除され、血痕だけ残っていた。

後日登校したとき、クラスメイトに件の話をすると、その犬は、T君の家で飼っていた犬の死体だと訊かされた。
T君の母が飼い犬と散歩中、信号待ちをしている際に突如縄が切れてしまい、
何故か犬が大通りをいきなり横切って、弾かれてしまったらしい。
ちょうどかっぱの手がある辺りの真上で。
T君自身もその話を震えながら周りにしていたようで、大分不安と恐怖に駆られていたようだ。
それ以来、その事を知っている子は、皆その地下道を避けるようになった。

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