Categories: 洒落怖

抑えられた力

この怖い話は約 3 分で読めます。

748 本当にあった怖い名無し sage 2010/11/10(水) 03:20:39 ID:J1mq4toE0
小学校に上がると、お坊さんの誘いと、祖父の強い奨めで寺の敷地内で行われている剣道道場に入門した。
門下生も多く、全国的に知れた名門だったため、練習はキツかったが、次第にのめり込んでいった。
今思えば、それは僕を守るためであり、僕の今後を見据えてのことであったのだが、当時は無論そんなことなど考えていなかった。

時は経ち、僕が中学生になる頃に祖父が亡くなった。
特におじいちゃんっ子だった僕だか、涙一つ流すことはなかった。
感性を封じられているせいだろうか、ちっとも悲しくなかったのだ。

750 本当にあった怖い名無し sage 2010/11/10(水) 03:22:16 ID:J1mq4toE0
葬式を終えて、静まり返った深夜に目を覚ました。
呼んでいる。
おじいちゃんだ。
進むべき場所は足がわかっているようだった。
台所。
スポットライトのように流し部分が明るくなっていて、蛇口からは糸のように水が流れているのが遠目からでもわかった。
一歩足を進めるごとに流れる水は勢いを増し、正面に立つ頃には、滝のようだった。

752 本当にあった怖い名無し sage 2010/11/10(水) 03:23:39 ID:J1mq4toE0
不思議と怖くはなかった。
近くにあったコップにその水を注ぎ、一気に飲み干す。
そうしなければいけない気がしたからだ。
すると、後ろでバタン、とドアが閉まる音がした。
振り返ると、ドラえもんのどこでもドアみたいな扉があった。
もちろん、今までそんな物はない。
先程の音は誰かが扉の中に入っていったものらしかった。

それが祖父だということ、また、それが自分の力であることを悟って、少しだけ泣いた。

754 本当にあった怖い名無し sage 2010/11/10(水) 03:25:30 ID:J1mq4toE0
次の日、お坊さんを訪ね、一部始終を話すと、やはりなあ、と漏らし、祖父も強い力を持っていたこと、恐らくそれが僕に引き継がれたこと、封印は昨日の件で解かれたことを話してくれた。
なんとなく、全て知っていたような気がした。

「もうその力を抑えることはできん。だが、そもそも抑えることこそ、不自然なもの。これからは抗うことなく受け入れてみなさい。」

何をどうしたら良いか聞いてみると、わからん、と笑われた。

「だがな、どうやらお前には救う力があるらしい。全てを救えとはいわん。敵わんこともあるだろう。だから、身近なものだけで良い、助けられるものに手を貸してやれ。」

764 本当にあった怖い名無し sage 2010/11/10(水) 03:36:59 ID:J1mq4toE0
帰り際に仏道に入る気はないか?と言われたが、丁重に断った。
そりゃそうだ、と坊さんはまた笑った。

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