Categories: 洒落怖

井戸

この怖い話は約 3 分で読めます。

流れをぶった切って申し訳ないが、俺の知ってる話を書いてみようと思う。
実話なのであんまり怖くないかもしれない。
名前は全部伏せるけど、多分地元の人間なら…というより、ググったらすぐにどこかわかるはず。
ただ、迷惑がかかるとまずい場所にあるんで、名前を晒すのはやめてあげてほしい。
長くなると思う。悪い。

この話を聞いたのは、高校1年のとき、入学したばかりのころだった。
日本史の担当をしていた先生が、この学校には曰くつきの場所があるんだよ、と教えてくれたんだ。

「井戸があるんですよ、ほら、あそこ、茂みの向こう…ここは高いから、わかりにくいかな」

先生は窓の外を指して、場所を教えてくれた。俺たちのいた教室は5階にあったから、確かに見えない。
誰だったか、クラスメイトの一人が、あの駐車場のところ?って声を上げた。

「そう、駐車場の横の、茂みの奥に。碑も立ってますよ」

もう60歳ぐらいになるその先生は、授業を中断してまでその井戸の話をしてくれた。
入学したてとはいえ、授業は面倒臭い。皆静かに聞いていた。

536 本当にあった怖い名無し sage New! 2010/09/04(土) 23:44:12 ID:ch36mYis0
どうやら、俺たちの通うその学校は、ずっとずっと昔は城だったらしい。
室町時代に造られた城で、中々堅牢な城だったという。非常に有名な某将軍と敵対して攻め滅ぼされたわけだが、激しい攻撃を受けても、長い間持ちこたえたそうだ。
けれど、結局水と食料が尽きて、落城した。今だって田舎としかいえないところに建ってるわけだから、昔は本当に田んぼしかない場所だったはずだ。
落城は当然のことといえばその通り。しかし、城内の人間は頑なだった。

「身投げしたんです、あの井戸に」

水が尽き、もうどうしようもなくなった城に火が放たれ、燃え盛る業火の中、武士は皆切腹。
女性は全員、井戸に身を投げたらしい。それほど落城が悔しかったのか、あるいは、辱めを受けるであろう今後の人生を憂えたのか…。
時代が時代とはいえ、凄惨な最期を遂げた城は灰塵となり、跡地には井戸だけが残ったという。

それから時は流れ、奇妙な噂が立ち始めた。
その井戸を覗き込むと、見えない何かに髪の毛を引っ張られるだとか、枯れているはずの井戸に顔が映るだとか、そうした目にあった人間は髪の毛が伸びる、だとか。

「霧の深い日に、火の玉が浮かんでたなんて話もありますよ」

どうやら、身投げをした人たちの怨念が今も残ったままらしい。
まあどうせそんなオチだろうな、と思っていただけに、拍子抜けすらしなかった。
きっと、クラスの皆だってそうだったと思う。
その日は、そのままいつものように一日を終えた。

537 本当にあった怖い名無し sage New! 2010/09/04(土) 23:45:29 ID:ch36mYis0
それからしばらく経った日のことだ。
確か、三者懇だったかなんだったかで、半日で放課になる日だったと思う。
そろそろ初夏を迎えるころ、最近暑いよなって話を友人三人としていた。そうしたら、ある一人の友人が、そうだ井戸行こう、井戸、と言いだした。

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