Categories: 洒落怖

嗅ぐ

この怖い話は約 3 分で読めます。

バイト先の会社の寮で幽霊騒ぎがあった。
俺は入社して1年も経たないのでよく知らなかったが、
以前から気味の悪い事が起こっていたらしい。
寮に入っている社員のTさんの部屋が特に出現率が高いそうで、俺に相談してきた。
T「この前もさ、顔洗って鏡を見たら俺の後ろに怖い女が映ってたんだよ、
ウワッと思って振り向いたら、まだ居るんだよ…せめて振り向いたら居なくなってほしい…」
Tさんは精神的にカナリまいっているようだ。
俺は子供の頃から霊感が強く、いわゆる「見える人」だが、
だからと言って霊をどうこう出来るわけではない。
しかし仕事中もずっとウツロな目をしているTさんを放っておくのも酷だ。
俺は同時期に入ったバイトのZを誘って寮に行くことにした。
Zは子供の頃から霊嗅覚が強く、いわゆる「嗅げる人」だ。
それが何を意味するのか、寮での実践を報告する。

213 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/13(土) 01:16:22 ID:9DpGI0OI0
俺たちが行くとTさんはよほど一人が心細かったのか、
わざわざ外まで出迎えてくれた。
けど俺は寮を見た時から、なんとなくイヤな感覚に襲われていた。
夜中にパトカーの回転灯が集まっている場所を見るようないやな感じだ。
…ふと、窓の1つに目をやると、閉じたカーテンが不自然にめくれ上がり、
そこから妙に小さな顔っぽいのがこっちを見ている気がした。
俺にはそれが「近づくな」の警告だと思えた。
でも、極力明るく振舞うTさんに気を使って、言えずに見られるがまま。
俺「えー…と、どうだ、Z。何か感じないか?」
Z「ん…いや、特に無いな。まあ上がらせて貰おうか」
T「おう、酒も用意しといたぜ、さ、さ、入れよ、な?」
ハッキリ言って俺は、今日はやめておこう気分になっていたが、
下戸のTさんに酒を用意されては退路が失われた。

214 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/13(土) 01:17:09 ID:9DpGI0OI0
Tさんの部屋に近づくほど、イヤな感覚が増す。
案の定さっきのめくれカーテンの部屋だった。
飲んでも気分が盛り上がるハズもないが、度胸付けの気持で飲む。
さりげなくカーテンを直しておいた。
Tさんによると、夜寝ている時が一番怖いのだと言う。
最近はマトモに眠れなかったそうだ。
今日は人が居ることに安心したのか、飲んでも無いのにウトウトとしている。
俺「布団で寝たらいいですよTさん」
T「ん、ああ、スマンな…」
Z「明日も仕事だし、俺らも寝るか」
この部屋ではとても眠れるような気分ではないが、俺とZも毛布を借りて寝ることに。
なんとなくカーテン側はイヤだったので、離れてソファーに横になった。
俺の様子が変だったのか、Zが小声で聞いてきた。
「なあ…何か見たのか?」
俺も小声で返す。
「ああ、ここに入る前に気味悪いのを…Zは?」
Z「特に無いって。俺は見れないもん、嗅げるだけ」
俺「…何度聞いてもわかんねーよソレ…あの、さ、幽霊ってどんなニオイなの?」
Z「…それぞれだな、モノによるよ。一つ言えるのは、人間のニオイじゃないって事かな」
それは、少しわかる。
俺も霊は人間には見えないから。

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