Categories: 洒落怖

自動車保険会社の男

この怖い話は約 3 分で読めます。

ありがとう。
それでは、同僚が体験した話です。

数年前、大きな台風が来た夜のこと。
同僚Yは出張からの帰途、浸水する道路を必死で走行していた。
時間は零時近く。夕方過ぎから警報も出ていたので、その頃は
車量もほとんどなく、数十メートルおきに置かれた外灯の明りだけ
が頼り。視界は最悪。道路はどんどん水かさを増してくる。
Yはそれでも叩きつける雨の中、ワイパーをフル回転させながら
必死に車を走らせていたんだけど、ついに前に進めなくなった。
窓を開けて下を覗き込むんでみると、タイヤがほぼ水に浸かって
いて、ドアの隙間からはじわじわ雨水が染み出し始めてきていた。

もうこりゃ駄目だ、と悟ったYは、自分の入ってる自動車保険に
「集中豪雨の際のトラブル」みたいな条項があったことを思い出して、
応援を呼んでみることにした。

247 243 sage 2010/02/06(土) 16:56:50 ID:MsxiGc6q0
実際こういうのを呼ぶのは初めてだったから、ちょっと緊張しつつ
ケータイを鳴らすと、深夜にも関わらず向こうはすぐ出た。丁寧な
対応で、事情を話すと、レスキュー班をすぐ派遣してくれるとのこと。
Yは自分の現在地の詳細に伝え、お願いしますと言って電話を切った。

雨はまだまだ激しく降っている。風も轟々。外は真っ暗で心細い。
早く来てくれないかなーと思いつつぼんやり時間をやり過ごして
いると、サイドミラーにぼんやり近づいてくる明りが見えた。

249 243 sage 2010/02/06(土) 17:17:21 ID:MsxiGc6q0
やっと助けが来たようで、Yはほっとした。

軽トラのような車両がYの車の後ろにぴったり止まり、
中からレインコートを羽織ったスタッフが現れた。
窓をコンコンと叩くので少し開けると「大丈夫ですかー?」
思っていたより若いまだ青年のような男だったが、Yには
救いの神に見えた。

「早かったですね」
「出られますか?」
「ドアが水圧で開かないみたいなんです・・・」
「じゃあ、窓から出ましょう。僕が引っ張るんで」

手際よく、Yは無事に車から出された。スタッフの男は、自分と揃いの
レインコートをYに羽織らせ、後ろのトラックまで誘導してくれた。

258 243 sage 2010/02/06(土) 22:35:13 ID:MsxiGc6q0

Yはレスキュー車の助手席に乗せてもらった。タオルも貸してくれた。
スタッフの青年は、自分はYの車のエンジンとか車両の不具合状況を
調べなきゃならないから、ここで少し待っていてくれと言った。

「あ、これサービスです。温まりますよ」

青年はYに魔法瓶を差し出して、自分は豪雨の中出て行った。至れり
尽くせりだなーと感謝しつつ、Yは魔法瓶の中身を注ぐ。紅茶だった。
あったかい。湯気と共に良い香りが車内に立ち込めた。猫舌なので、
紅茶をちょびちょび舐めるように飲んでいると、携帯が鳴った。画面
を見ると、保険会社からだった。レスキューが無事着いたかどうかの
確認だなと思い、Yは電話を取った。

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