Categories: 洒落怖

古いオルガン

この怖い話は約 2 分で読めます。

女の人がいた。

ワンピースを着ていて、後頭部には髪の毛が生えていなかった。

私は、驚きのあまり声も出ず、体も動かず、なのに汗だけは体のどこかが壊れてしまったように流れていた。

女の人が振り返った。(この動作はとてもゆっくりで、多分十秒くらいかけて振り向いた。)

暗い上に、結構距離があったので顔はよく見えなかったが、多分目に何かがびっしり刺さっていた。口は私よりかなりおおきかったと思う。
顔もすごいが、それでも一番印象的だったのは、足がないことだった。
それが、普通の人間を見慣れた私にとって、視覚的に圧倒的な違和感を与えた。

166 本当にあった怖い名無し New! 2012/02/13(月) 08:51:01.03 ID:RsgmH26g0
女の人がいきなり絶叫した。

動けない私は、泣いてしまった。踏み潰されたような声を出して泣いてしまった。
女の人が絶叫している時間は無限にも感じられたが、実際は数秒だったのだろう。
また突然叫ぶのをやめて、そのまま固まってしまった。
女の人に背を向けるのは本当に怖かった。
しかし、私はその瞬間に全力でリビングを飛び出し、玄関を駆け抜け、外に走り出した。家の中にはいられなかった。
女の人がついてきていないのを確認して、そのまま朝まで外で過ごした。

朝、家に女の人はいなかった。家族は何も知らないようだった。あのおぞましい絶叫も聞かなかったらしい。

その一ヶ月後、私は交通事故にあった。自転車でバイクとぶつかった。
下半身が、おそらく一生、動かなくなってしまった。

またその二年後、母が新しいオルガンを買った。
今度の新しいオルガンは、ベースの音もいい。母は楽しそうだった。私も一度だけ弾こうとしたが、やっぱり、ベースは弾けなかった。

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