Categories: 洒落怖

ピントが合わない

この怖い話は約 2 分で読めます。

題名、空欄。送り主、さとみ。
メールを開くとメッセージは何もない。
動画ファイルが一つ添付されている。
そのファイルを広げる。
最初真っ暗な画面。
やがて中央に縦に長い白いもやが現れる。
輪郭がはっきりして来て、それが人だと分かる。
しかしそれは左右にブレていて、ブレは細い縞状に連なっていた。
それの右手がゆっくりと前に突き出される。
『ミツケテ クレタネ 。 ネエ コッチ キテクレルヨネ?』
彼女はそういうと確かにニッコリと笑った。

ああ全てを思い出した。さとみさんだ。さとみさんは確かに実在した。
そして思い出す。
おととい金曜日の夜十時ごろ、会社の給湯室でさとみさんとコーヒーを飲んでいた時。
「なんとか今日で区切り付けられそうだね」
「まーな、でも来週から違う奴がきつくなってくるし、本当消えてしまいたいよ」
「消えたいの?」
とさとみさんが顔を覗き込んでくる。
「じゃあ、一緒に消えちゃおうか?」
いたずらっぽい眼をしてくる
「いやーやっぱやめとく。いっぺんに二人も消えたらマネージャーがショック死するぜ」
「確かに」
背を向けてコーヒーを飲む。
「ねぇ、タカハシくんて覚えてる?同じ部署にいた」
「タカハシ?いったっけそんな人」
仕事で頭が一杯だったから気にしなかったが、あの時すでに始まっていたんだ。

67 55 sage 2010/01/31(日) 13:43:32 ID:fXy0MD5bi

俺はそっとコンパクトデジカメを手に取ると、腕いっぱい伸ばしてレンズをこちらに向ける。
そしてシャッターを半押しする。
デジカメがピントを合わせようとするが、レンズの駆動音は鳴り止むことがなかった。

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