Categories: 洒落怖

エリーゼのために

この怖い話は約 3 分で読めます。

暗澹とした気分になりました。最初の社会勉強でした。

271 3/6 sage 2009/12/15(火) 22:17:53 ID:1fSqPHYk0
結局遺体をどうしようかという話になり、もう一度話は警察へ。
誰かが面会に来た時にすぐ会えるようにという配慮から、「隔離室」に安置することとなりました。

この隔離室、少し説明しにくいのですが、救急の一番奥まったところにあります。
手前から診察スペース(ウォークインの診察室と救急車受け入れ)があり、処置のスペースがあります。
私たちはだいたいこの処置スペースと診察スペースを行き来しています。
さらに奥に経過観察用のベッドが10台あるのですが、そのさらに突き当りにあります。
カーテン付きのドアで仕切られていて、救急室のベッド側と廊下2か所から出入りできますが、
どちらも施錠できます。(以前知らない間にホームレスが入っていたりしたことがあったので…)
正しい使用方法はインフルエンザの患者の点滴などですが、今回はそこに入っていただこうというわけです。
空調も別になっているので、その部屋だけ最低温度に設定してクーラーをかけ、施錠しました。

ショックを受けていた自分も、すぐにまた怒涛のように運び込まれる酔っ払いの相手をしているうちに、その患者のことが頭から抜け落ちて行きました。
それがだいたい11時ごろ。

異変が起きたのは深夜1時半ごろでした。

272 4/6 sage 2009/12/15(火) 22:18:50 ID:1fSqPHYk0
観察用ベッドと隔離ベッドは先ほども言ったように近いとはいえ少し離れているので、
各ベッドに一つずつナースコールがあり、鳴らすと「エリーゼのために」が流れます。
意外と音が大きく、救急全体で聞こえるので、だいたい看護師さんが誰か手を止めて、
ベッドのところに行ってくれます
(しょうもない要件ばかり何回も言ってると何もしないこともあるみたいですが)
しかし、悲しいことに看護師よりも研修医の方が立場が下で…あとは察してください。

というわけでぱっと板を見に行くと、観察室のランプがチカチカ。
何も考えずにナースコールを取って「どうしましたか?」と言った瞬間、後ろからぱっと別のドクターが切ってしまいました
(ちょうど壁についてる固定電話みたいになっています)
「え・・・」
「お前良く見ろ、隔離室だぞ。」
「あっ・・・え、あのー、酔っ払いが忍び込んでる、とか?」
「鍵は俺がかけた。」
そういってポケットから鍵を出す上級医。
「そして今も持ってる。あとは聞くな、考えるな。こういうことも、たまにある。」
そして鍵を戻してぼそっと
「ただの故障だ、厭な偶然、それだけだからな。」

もうそのあとは怖くてしかたありませんでした。
しかし自分がやらかしてしまったせいでしょうか、その後ベルが鳴る鳴る…。
ひっきりなしにエリーゼのためにがガンガン流れます。
そのたびにめんどくさそうに受話器をガチャギリする上級医。
しかしベルはひどくなる一方でした。

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