Categories: 洒落怖

田所くん

この怖い話は約 3 分で読めます。

675 田所君13 New! 2012/05/27(日) 02:06:45.93 ID:1HnKSW970
「そして遂に、蓋がされていた金属板の表側が現れた。
小学生は狂喜して思いっきり蓋を引いた。するとどうだろう、
あれほどびくともしなかった蓋が、いとも簡単に外れた。
小学生は、金属板の表側の全貌を見た」

「それは、ただただ真っ黒の金属板だった。
だが、まるで吸い込まれそうな黒だ。
小学生は、金属の表面に触れようとして手を伸ばした。
その時、彼の耳に何かが聞こえてきた。それはとても小さな声で、
ひたすら何かを呟いていた。どうやら金属板から聞こえてくるようで、
小学生はなんといっているのか確かめようと耳をつけた」

676 田所君14 New! 2012/05/27(日) 02:07:47.29 ID:1HnKSW970
「アケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロ
アケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロ
アケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロ
アケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロ
アケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロアケロ
アケロアケロアケロ」

「ひたすら『アケロ』と呟く声が聞こえた。
びっくりして離れようとしたが、耳が離れない。
それどころか、さっきまで耳が感じていた
金属の冷たさがいつの間にか消えていた。
次の瞬間、真っ黒の表面から赤黒く爛れた2本の腕が出てきて、
彼の頭をわしづかみにした。抵抗する暇もなく、
小学生は真っ黒の金属板の中に引きずり込まれた。
そして、そこで夢から覚めた」

677 田所君15 New! 2012/05/27(日) 02:08:53.18 ID:1HnKSW970
「夢から覚めた小学生には、もはや恐怖心などかけらもなかった。
ただただ、夢だけでなく現実の金属板も確認したい、その一心だった。
彼は既に、あの金属板に取り憑かれていた。
小学生には確信があった。あの時はびくともしなかったが、今なら開けられる。
夢であけた自分だからこそ開けられる、そう信じて疑わなかった」

「もはや夢など待たずともよい、
すでに金属板以外のことなど考えられなくなっていた小学生は、
親に黙って再び神社に向かった。
そして、小学生はそのまま行方不明になった。
夢と同じように、金属板の中に引きずり込まれたのか、
あるいは別のことが起きたのか、それは定かではない。
結局あの金属板が何だったのか、それは誰も分からない。
知っているのは、小学生と、蓋をした『誰か』だけだ」

678 田所君16 New! 2012/05/27(日) 02:10:13.37 ID:1HnKSW970
田所君の話の面白いところは、創作にもかかわらず
話のラストで全てが明らかになるわけではない、というところだ。
この「蓋の話」にしても、結局その金属板が何なのか分からずじまい。
話が終わり、ひとしきりブルッた後、俺たちは話の続きというか
あの金属板が何だったら面白いか、という話題で盛り上がった。
ありきたりだが、あの世に繋がっている鏡、というのが多数だった。
あの世じゃなくて地獄だ、いや精神世界だ、鏡じゃなくて時空のゆがみだ、
といろいろな想像を話して楽しんだ。
だが、何故か分からないがみんなその話に小さな違和感を感じていた。

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bronco

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