Categories: 洒落怖

この怖い話は約 2 分で読めます。

960 鞄3/3 ◆BxZntdZHxQ sage 2008/03/08(土) 00:08:36 ID:3Glkgwhz0
オレンジ色の豆球の明かりの中、叔母は旅行鞄のファスナーを開ける。
大した荷物も入っていない、クタクタのバッグ。
開いた鞄の口を覗いたら目が合った。
鞄の中の目と。
人とは思えない顔、鬼としか思えない異形の男の首が。
首が鞄に入っている!!
叔母は咄嗟に鞄を払い除けた。横倒しになった鞄から、ごろりと首が転げ出る。
「××××××××!」
首は判別不能な叫び声を上げて、襖の向こう、暗い台所へと転がって行った。
ごつんとどこかに当たる音。
叔母は恐る恐る暗がりを覗いた。
しかし、そこにもう鬼はいなかった。
家中の明かりを点けて確かめたが、台所には勿論、鞄の中にも首はない。
電灯の光の下の鞄には、衣類と洗面道具、ウォークマンが入っているだけだった。

脱衣所に着いてからも続いた話が終わって、
郁は巾着袋からタオルやら何やらを引っぱり出しながら笑っていた。
「…だから母は鞄をきちんと閉めないと怖いんです。
旅館のその部屋で、母は鞄を開けっ放しで置いていたんですよねぇ。」
そう言いながら、郁は袋に通された紐を左右にぎゅうと引いた。

俺はその話を聞いて以来、鞄の口は必ず閉める事にしている。

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