Categories: 短くて怖い話

摘んではいけない

この怖い話は約 3 分で読めます。

私は高校生の時、友達とキャンプをしに行きました。
友達のうちの一人が、穴場を知っていると言うのです。
さてそこに付いてみると、川の水は美しく、魚が沢山泳ぎ、風通しがよい、申し分のない場所でした。
初めてのキャンプで、こんな良い場所に来れるとは!という事で、すっかり浮かれ気味になった私達は、
まるで小学生のようにそこらへんを探検することにしました。

79 名前:78 投稿日:04/06/20 14:10 ID:30I02T60
しばらく歩いていると、なにやら香しい香りがします。
見ると目の前に、鮮やかなピンク色の花畑が一面に広がっていました。
その美しさ、一種の神々しさに見とれて、しばしの間ぼうっとしていました。
「ねえ、これ摘んでもいいかなあ?」
「3、4本くらいなら…いいんじゃない」
今思うと、見たこともない花を摘むと言うのは、いけない行為なのですが、私達はそれを知っていながら、それを摘んでしまおうという気持ちに負けてしまいました。
美しい花に出会い、それを摘んできたと言う満足感に満たされ、その後のキャンプはとても楽しいものでした。
夕食後はランプに火をともし、雑談会。
最近のテレビの話、いやな先生の話、男の子の話、そしてつきものの怪談…。
私達は夜遅くまで、わいわいとしていました。

80 名前:78 投稿日:04/06/20 14:11 ID:30I02T60
ところがです。
いつもにぎやかでお笑い担当のMが、いつになく静かなのです。
「M、どうしたの、大丈夫?具合悪いなら、寝なよ」
「うん、大丈夫」
そうは言っているものの、顔は真っ青、身体を縮こまらせ、ガタガタと震えています。全然大丈夫そうではありません。
「だめだよ、今から家に帰る?」
「いいの、いいから」
皆心配して、Mによってきました。しかしなおもMは大丈夫と言い続けます。

81 名前:78 投稿日:04/06/20 14:12 ID:30I02T60
「うるさあああい、痛いんだよおおお!」
いよいよMが苦しそうだと言うとき、Mはいきなり私達につかみかかってきました。そのときのMの顔は、人のそれではありませんでした。
そんな中、私の耳もとで誰かが何かを呟いています。こんなときに悪ふざけを!
「ちょっと!」
振返ると、そこにあるのは闇ばかり。
Mは白眼を向いて倒れてしまいました。見るとずれた服から見えるMの腹には、青いアザがくっきりとありました。
目を覚ましたMに事情を聞いてみると、
「急に腹が痛くなり、下したかなあ、と思っていたが、どうもそれとは違う。
そのうち、腹がさける様にいたくなり、しまいにはそこからちぎられる様な痛みが襲った。その後は分からない」
と言いました。
ただの病気ならいいでしょう、しかし、あの私達を襲ったMの顔…。
「何か」が憑いたのではないか、ということが、言わずとしても私達の中で一致していました。

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