Categories: 短くて怖い話

摘んではいけない

この怖い話は約 3 分で読めます。

82 名前:78 投稿日:04/06/20 14:13 ID:30I02T60
「きゃあ!」
突然、メンバーの一人が悲鳴を上げて耳の後ろを押さえました。
「どうしたの?」
彼女は青い顔をして言いました。
「耳の後ろがむず痒いと思ったら、なにかが喋ってたの」
「…もう、寝ようか」
誰がともなく言ったので、皆それに従いました。
テントの中で私は、気を紛らわそうと持ってきたウォークマンで音楽を聞き始めました。

85 名前:78 投稿日:04/06/20 14:14 ID:30I02T60
やっと落ち着いてきたときでした。
音とびがし、それに合わせて何かが聞こえます。さっきの、私の耳もとで呟いていた、「何か」の声です。
恐ろしさのあまりがたがたと身が震えます。
「…………イ」
いやだ、いやだ、と意味もなく呟いてみても、同じでした。
声が、段々、ハッキリと聞こえる様になってきます。
「…イ……イ」
耳からヘッドフォンを思いっきり抜き、寝袋にくるまりました。それでも、まだ聞こえてきます。
「イ…イジャ…イ」
涙が溢れ、耳を押さえても聞こえてきます。
そして、とうとう「それ」が何を言っているのかが、分かりました。
はっきりと、聞こえたのです。

「痛 い じ ゃ な い」

86 名前:78 投稿日:04/06/20 14:16 ID:30I02T60
「きゃあああああ!!」
もう我慢の限界です。私は耳を押さえて叫びました。
「どうしたの!?」同じテントにいる子が、私に聞きました。
それに答えようとしたとき、急に腹が痛くなりました。それもただの痛さではありません、そこからちぎれてしまいそうな痛みです。
(痛い、痛い、死んでしまう!)
気絶しそうになるその瞬間、あの花の匂いが一瞬、漂いました。

目を覚ますと朝でした。友達が、心配そうに私の顔をのぞいています。
聞くと、私以外にも、「誰かが耳もとで呟いていた」と言った子、そしてもうひとり、
同じ様になった人がいたそうです。
一体、あれは何だったのだろうか?そう思いながら着替えていると、足下に、茶色いかさかさしたものが触れました。
拾ってみると、それは昨日摘んだあの花でした。一晩でこんなになってしまうなんて…?
そのとき、私の腹に、青いアザが一本あるとこに気がつきました。
そしてあることに気がつきました。
この症状が出たのは、この花を摘んだ人だけ、Mもそのひとり。
もしかして私は、摘んではいけないものをつみ、そのバチがあたったのではないのか…?

87 名前:78 投稿日:04/06/20 14:17 ID:30I02T60
帰る前に、私は一人で、あの花畑へと行きました。相変わらず香しい匂いがします。
ですが、そこに感じられたのは、あのときの神々しさではなく、
一種の恨み…そのようなものでした。
今でも、そのアザは消えません。
多分、一生消えることはないでしょう。

Page: 1 2

bronco

View Comments

Share
Published by
bronco

Recent Posts

迷い

霊とかとは全然関係ない話なんだ…

4年 ago

血雪

全国的にずいぶん雪がふったね。…

4年 ago

母親の影

私が小6の時の夏休み、薄暗い明…

4年 ago

閉じ込められる

彼はエレベーターの管理、修理を…

4年 ago

彼女からの電話

もう4年くらい経つのかな・・・…

4年 ago

テープレコーダー

ある男が一人で登山に出かけたま…

4年 ago