Categories: 洒落怖

彼女

この怖い話は約 3 分で読めます。

俺は一緒にバスルームに入ろうかとも一瞬思ったが、大人しくテレビをみていることにする。
しばらくすると、彼女が勢いよくバスルームからでてきた。
何事かと振り向き、彼女の方を確認する。
彼女は体もろくに拭いておらず、バスタオルで体をくるんだ状態で、そのままの勢いで俺にしがみついてきた。
当然、状況を把握できずに焦る俺。
彼女は、顔を伏せたまま、部屋とバスルームを繋ぐ扉の方を指さして小さな声で
「あそこに……赤い服を着た女の子が……」
と言った。
俺は指を指す方を見るも、笑いながら
「そうやって、幽霊がいるいる、って思ってるから見えるんだよ。気でも紛れれば見えなくなるよ」
と言い、TVの音量を上げ、彼女の体をシーツで拭いてあげたり、頭を撫でてあげる。

俺は、あの時のセリフを震えずに言えていたのか、自信はない。
だって、確かにその扉の陰には、赤い服を着た女の子がいたのだから。

15 8と9の後日談 2008/02/08(金) 14:07:52 ID:dWJYwYNk0
彼女の頭を撫でていると、しばらくして彼女は寝てしまった。
何度かチラ見して幽霊の姿を確認するも、幽霊自身に動く気配はない。
幽霊の子の髪は長く、目が隠れており、口元は若干笑っているようにも見受けられる。
タオルか何かの見間違いかと思ったが、やはり何度見ても人の形にしか見えない。
確認しようと幽霊の方へ向かいたかったが、体を動かして彼女を起こしてしまうのも気が引ける。
何せ、「幽霊なんかいない」発言をした手前、確認してやっぱり幽霊だったら立つ瀬がない。
まぁ、俺自身若干怖いのもあったんだが。

そうこうしていると、うつらうつらしてきて、結局俺も座ったまま寝てしまった。
彼女に起こされたのが、朝の六時頃。
その頃には、幽霊の姿は消えて無くなっていた。
その扉周辺を確認するも、やはり人間に見えそうな物がどこにも無い。
彼女はホテルを出る前にやるかどうか尋ねてきたが、俺は断った。
昨夜のノリだったら、酔った勢いでやっていただろうが、
朝になって醒めたらやっぱり現恋人に申し訳が立たない気持ちが出てくる。

帰りの車の中、実は俺にも見えていた事を彼女に伝えた。
彼女は元彼(それこそ、中学時代に付き合っていた男)とあのホテルに入り、幽霊を目撃したのが最初だったとの事。
その時、男は逃げだし、それが原因で(他にも要因はあるみたいだったが)別れたらしい。
あの時の彼氏が、○○君(俺)だったら……みたいな思わせぶりなセリフも吐かれたが、今となってはどうしようもない。

結局、彼女とはそれ以後会っていない。
おそらく、関西の方で新しい彼氏でも作ってるとは思うが……。

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