この怖い話は約 3 分で読めます。

コンコン。
突然の窓をたたく音に、私はシートから飛び起きた。
後部座席の窓ガラスに居るのは、V。あ、け、て、く、れ、よ。此方の方を向いて口だけを動かす。ばれてしまっては仕方ない。
舌打ちしながらロックを解除すると、Vは図々しくも無断で乗り込んできた。
 「なんか用か。」
ばればれなのは分かっていたが、とりあえずしらを切る。
だが、帰ってきたのは、いつもの馬鹿っぽいVとは似ても似つかない、それこそ何か取り憑いているような口調での
 「手伝えよ。気になるんだろ?赤いコートと黒服。」
の言葉。あっけにとられる私に、抱えていた紙袋をVが放ってきた。
そうか。
この店は古本屋と古着屋が繋がっている。
私が古本屋を見張っている間に中で移動してきたのか。
今更そんな事に気付きながら紙袋の中を覗き込む。ああ、考えなくても分かる。
 「今から学校まで戻ってよ。それ着て、T川の川沿いの道の方にいこう。
ユーレイ退治するからさ。」
にやにや笑いが勘に触るが、乗りかかった船だ。

781 本当にあった怖い名無し 2011/07/02(土) 01:48:19.89 ID:LMdrtnMj0
しぶしぶ私の車で学校にとんぼ返りとなった。
すっかり暗くなった駐車場に車を止めて、そのまま川沿いへと歩き出す。
 「なあ、本当に出るのか?」
普段から不機嫌そうだと評される私だが、今回は本当に不機嫌だ。
Vの挙動不審を追跡していれば、いつの間にか幽霊探検だ。不機嫌にもなる。
 「ああ、でるよ。ほら。」
Vが投げてよこしたのは、携帯電話。開いてみると、ネットニュースが開かれている。
ニュース記事に書かれているのは『女子高生4人軽傷・肝試し中不審者に襲われる』。
噂話の正体はこれか。ニュース記事だけみれば完全に単なる春先の変質者だ。
これを幽霊と称するのは、やはり「赤いコート」とおあつらえ向きの条件があるためか。
なんでもそういうふうに捉えたがる人種には、悪くない話なのだろう。

もっとも、噂のほうで語られていた帰ってきていない、は誇張だったのだろう。
 「思ったより早かった。こんなに早く動けるなんてさ。なんかあったかな。」
前を行くVがこちらを振り返り、笑った。
とびっきりの笑顔で。わたしでは無い。宝物でも見つけたような表情。

いいようのない悪寒が背筋に走り、私は振り向いた。いた。

783 本当にあった怖い名無し 2011/07/02(土) 01:50:31.07 ID:LMdrtnMj0
黒い影。人の形で、両手をぶらりと下げている。
近づいてくる。速い。でも足は動いていない。歩いていない。
直ぐに逃げるべきだったが、私は食い入るようにその影を見つめていた。
もしかすると金縛りとかいうやつだったのかもしれない。
影が影で無くなって、人、いや顔や手がある存在であることを認識できた時、
ようやく私の口から「あ、あ、」という情けない声が出た。
と同時に、影がゆっくりと顔と腕を上げ。

Page: 1 2 3

bronco

Recent Posts

迷い

霊とかとは全然関係ない話なんだ…

4年 ago

血雪

全国的にずいぶん雪がふったね。…

4年 ago

母親の影

私が小6の時の夏休み、薄暗い明…

4年 ago

閉じ込められる

彼はエレベーターの管理、修理を…

4年 ago

彼女からの電話

もう4年くらい経つのかな・・・…

4年 ago

テープレコーダー

ある男が一人で登山に出かけたま…

4年 ago