この怖い話は約 3 分で読めます。
ある日のことです。当時自分は中学生でしたので和室に入る用などめったになかったのですが、
たまたま家族が留守の時、学校で応援に使ううちわが和室の欄間に挿されていたのを思い出して
取りに行ったのです。すると家の中には誰もいないはずなのになぜか人の話し声が聞こえてきます。
ごく小さな声ですが和室の中からです。ふすまの前で聞いているとこんな感じです。
「・・・・これで収まったと思うなら浅はかな・・・。」「ただ臭いものに蓋をしたにすぎないだろ
・・・今にもっとヒドイことが・・・。」どうも二人の人物が会話をしているようです。
自分はコミカルな声調だったのであまり怖いとも思わず一気にふすまを開けて見ました。
しかし当然ながらそこには誰もいませんでした。
ただ床の間の絵を見たときに、なんだか2人の僧の立っている位置が前とは違っている気がしました。
そしてそれから2・3日後、夜中に家に小型トラックが突っ込んでくるという事故が起きたのです。
塀と玄関の一部を壊しましたが幸い家族にケガ人はありませんでした。
488 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/06(水) 18:59:41.27 ID:MDvy3SQS0
親父はこの事故のことでずいぶんと考え込んでいましたが、それからはますます骨董買いに拍車が
かかりました。古めかしい香炉、室町時代といわれる脇差、大正時代のガラス器などなど。
そしてそのたびに家に変事が起こり、また収まり、そしてもっとヒドイことが発生するといった
くり返しになりました。骨董に遣ったお金もそうとうな額にのぼったと思います。
「あっちを収めればこっちの障りが出てくる、考えなきゃいけないことが十も二十もある。こらたまらんな。」
親父はノイローゼのようになっていました。そして今にして思えば骨董蒐集の最後になったのが、
江戸時代の幽霊画でした。これはずいぶん高価なものだったはずです。
それは白装束の足のない女の幽霊が柳の木の下に浮かんでいる絵柄で、高名な画家の弟子が描いたもの
だろうということでした。親父は「この絵はお前たちは不気味に思うかもしれんが、実に力を持った
絵だよ。この家の運気を高めてくれる。」と言っていました。
そしてその絵が家に来た晩から自分の小学校低学年の妹がうなされるようになったのです。妹は両親と
一緒に寝室で寝ていたのですが、決まって夜中の2時過ぎになるとひーっと叫んで飛び起きます。
そして聞いたこともない異国の言葉のようなものを発し、両親に揺さぶられて我に返るのです。
もちろん病院に連れて行きましたが何の異常も認められないとのことでした。家の者はまた骨董のせい
ではないかと疑っていましたが、それを親父に言い出すことはできませんでした。時宝堂が来ていたときに
親父がこの話をしたら「おお、それはいよいよ生まれるのですな。」と意味不明のことを言っていたそうです。
そしてその日の夜のことです。やはり2時過ぎ、妹はうなされていたのが白目をむいて立ち上がり、
「がっ、がっ、あらほれそんがや~。」というような言葉とともに大人の拳ほどの、白い透明感のある石を
大量のよだれとともに口から吐き出しました。
次の日、時宝堂が来てその白い石をかなり高額で買っていったそうです。親父はこのことを契機に時宝堂との
つき合いをたち、骨董の蒐集もすっぱりやめてしまいました。
「家族には迷惑をかけられないからな。みんなの健康が何よりだよ。これからは庭いじりでもやることにする。」
そして我が家の異変は完全に収まったのです。
Page: 1 2