Categories: サイコ

ドラム缶風呂

ある日、部屋に帰ったんだよ。
玄関開けた瞬間に、いきなり部屋の中に引きづりこまれたんだ。
ガチャッグワッって感じ。
わけも分からず口にガムテープ、手と足には多分梱包用のビニールヒモ。
あれ手に食い込んで痛いし、何か熱持ってるみたいになるよな。
手と足のビニールヒモで一つに縛り上げられて、ゴロンって床に転がされたんだわ。
ホント手馴れてたって思うよ。
抵抗しようと思う前に手と足の動きが封じられてた。

やばいやばいって気持ちが頭ん中で一杯だったんだが、ゴリラがいないのが気になった。

で、その中の責任者みたいな男が床に転がった俺の目を見て話し始めた。
妙な発音の異常に甲高い声で耳にキンキン響く声だった。
悪魔の声ってのは、ああいう声なんだと思う。

「お前、アイツの仲間か?」

俺は大袈裟に首を横に振った。
床に頭がゴンゴン叩きつけられたけど、そんなのに構ってる場合じゃなかった。

「ここお前の部屋だろ、仲間じゃないなら何なんだ?」

説明しようにも口にガムテープがグルグル張られててモガモガ言うことしか出来なかった。
まあ向こうも俺の存在は謎だったらしい。
「取りあえず場所変えるぞ」ってさっきの甲高い声の男が周りの男に指示した。

真っ黒い窓のないバンみたいなのに乗せられて、タオルかなんかで目隠しされた。

時間間隔とか良く分からん。
一時間くらいは走ってたと思う。
バンを降りて、歩かされて、タオル取られたら目の前に全裸のゴリラがいた。

コンクリートの床に寝転がされたゴリラはうーうー唸ってた。
たまにごほごほ咳き込んでたんだが、意識は混濁してたんだと思う。
鼻の位置と頬の位置が同じに見えるくらい顔がパンパンに腫れてた。
体中が青とか黒とか様々な色の斑点が出来てた。
多分殴られすぎて、色々なところが内出血してるんだと思う。

こっちには気付いてないみたいだった。

俺はガムテープを一気に剥がされ、さっきの男にまた耳障りな声で質問された。

「おい、お前コイツとどういう関係なんだ?」

多分、ここの答えを間違ったら俺もゴリラみたいになるってことは良く分かった。
俺はゴリラとパチ屋で知り合って、その縁から俺の家に居座られたことを説明した。

甲高い声の男はあまり聞いてないように見えた。

「本当か? 助かりたいからって嘘ついてねえか?」

俺は全力で否定した。
「確かにスロ仲間でメシ食いにいくくらいの仲の良さではあったが金を盗んだりはしてない」ってことを強調した。
だがこれが裏目に出た。

「なんでお前、コイツが金パクったって知ってるんだ?」

自分が墓穴を掘ったことを理解して、俺は黙ってしまった。
数日も一緒にいるんだからソイツが何をしてどんなヤツに追われているかぐらいは知っていてもおかしくないだろ?
だけど俺はビラ刷りの会社の社員だったからもっと細かい内情を知っていた。
それの罪悪感から黙ってしまった。

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