Categories: 洒落怖

覗き込む者達

この怖い話は約 3 分で読めます。

315 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 07:41:40.37 ID:4Hf0Iatx0
翌朝、目が覚めてすぐ部屋の中を見渡したが変わったことは何もない。ジョージも気持ちよさそうに寝てる。
俺はジョージを起こして昨晩何か起こらなかったかと聞いたが何もなかったとの返事。昨日あったことを話すと夢でも見たんだろと笑われた。
朝飯の時に他のメンバーの前でも話したんだが、そこでの反応も似たり寄ったりで、何だか些細なことで騒いでるみたいで恥ずかしくなった。
その日も初日に輪をかけたような重労働で俺はすぐ寝入った。
急に目が覚めた。暗い。時計を見ようとして首が動かない。そして男が……両側にいる。左側に半裸の男。そして右側には小柄な人影が見えた。
右側はすぐ壁のはずなのに、確かにそこに佇んでいるのだ。もやがかかっているようだがどうも老人のようだ。と、老人が屈み込んできた。
それに合わせたように眼球が動く。嫌だ。見たくない。見たくないのに。
赤黒く皺だらけの顔に目、鼻、口。ポツンポツンと穴が開いている。口と思しき部分が何やら蠢いていた。俺を見ながら何か言っているのか。
頬にひんやりとした冷気が当たった。顔の周りだけ温度が違う。左側の男もいつ間にか前屈みになっている。老人の顔が更に近付いてきて……。
気がついたら朝だった。

316 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 07:57:44.38 ID:e2ncxfgki
尿瓶

317 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 08:13:35.65 ID:4Hf0Iatx0
その朝もジョージに確かめたがやはり何もなかったとのこと。朝飯の時に今度は2人になったと言ってみたが、またも失笑を買うだけだった。
一緒に食事していた現地のスタッフは心配そうに気遣ってくれたが、彼女も何も解らないようだった。その時ジョージが笑いながらこんなことを言った。
「お前日本人だから恨まれてるんだよ、昔日本軍がインドネシアでどんな酷いことをしたか知らない訳じゃないだろ?」
それを聞いて俺は笑えなかった。そうかも知れないとの思いが頭を掠めた。
ふとインドネシア人の子を見ると眉を顰めて俺とジョージを見比べていた。
その日は今までと比べて肉体労働は少なく、ジョージと夜中まで喋った。ジョージたちの団体は明日引き上げることになっており、
彼はやっと文明社会へ帰れると喜んでいた。俺も寝るのが億劫だったこともありその夜は1時過ぎくらいまで起きていた。
やはり目が覚めた。直後に恐怖が襲ってくる。ベッドの周りを黒い人影に囲まれていた。
大きさはまちまちで半裸の人がちらほら見えた。子供もいた。
俺が目を覚ますのを待っていたかのように一斉に屈み込んできた。
視界に覆い被さってくる顔、顔、顔。青黒い顔、紫の顔、白い顔、しかし無表情なのは同じだ。
睨んでいるというのではないが、とても正視できない。もうダメだと思った。見えるのは顔だけ。怖気が身体中を駆け巡ってもうどうにもならなかった。
しかも前二晩と違って一向に気が遠くならない。今夜が最期なんだと悟った。もう行くところまで行ってしまうんだと。
俺は口の中で謝罪の言葉を繰り返した。戦争の時ごめんなさい日本軍がごめんなさい。迫る顔は止まらない。そして顔がぬちゃあっとした感触に包まれた。
その時、何故か口が開いて息がはああっと漏れた。そのまま息が吸えなくなってやっと意識を失えた。

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