Categories: 洒落怖

物乞い

この怖い話は約 3 分で読めます。

オカルトと言って良いかどうか判らない上に、「それはお前が悪い」と言われておしまいな気もするがちょっと書いてみます。
規制が心配なので大分端折ったら創作っぽくなってしまいましたが、文章のまずさはあんま気にしないでください。

もう大分前のことになるが、学生時代に一度だけ妙な体験をしたことがある。高二の春だった。
その日はたまたま早く帰ることが出来たため、ちょっと散歩でもしようと三つも前の駅で降りて知らない道を周って帰ることにした。
いざとなれば、途中途中のスーパーやファミレスの看板でも頼りにすれば家に付けるだろうと考え、路地裏や通学路をフラフラ歩いていた。
すると何個目かの曲がり角で、「お嬢さん」と声がする。
振り返ってみると、失礼ながらかなりみすぼらしい(所謂浮浪者?ではなく、小綺麗なんだけどその全体
が古ぼけ、ぼろのようになっている)格好のおじいさんが座り込んでいた。皺だらけの顔を、ニコニコさせている。

「すまないが、水をくれませんか」とおじいさんが呟いた。
呻くでもなく、嗄れ声でもなく、言うなればジワッとした明瞭な声だった。
重ね重ね失礼ながら、水なら公園や駅前にもある。これは訳アリだなと思った自分は、よせばいいのにペットボトルの水を渡した。
偶然にも、学食のコップについで飲んでいたので口自体は付けていないから良いかと思っての判断だった。
この時は、プチ善行とすら思っていた。
おじいさんは、大儀そうに腕を伸ばして瓶の下方を受け取ると蹲るように礼をする。
自分も会釈をして、またしばらく歩いた。

939 続きます。② sage New! 2013/03/27(水) 18:06:38.78 ID:XMTvCNbI0
涼しくて良い散歩日和だと思った。猫が居たのでそれを眺め、もう桜が咲き始めていたのでそれも眺め、視線を降ろすと道の脇に老人が居た。
ギギギと音がしそうなテンポで首をこちらに向け、「すまないが、飴をくれませんか」と呟いた。
これまた失礼ながら、この町こんなホームレス多いのか?と思いつつ、飴は無いので先日友人からもらったキャラメルをそのまま横流しした。
しわくちゃの手にそれを落とすようにして渡し、そろそろ知ってる道まで戻ろうと少し歩くスピードを速めた。
工場の裏に、老人が居た。
「紙をくれませんか」と聞かれたので、授業で配られたファイルの中紙として挟まっていた藁半紙を渡した。
民家の軒下に、老人が居た。
「鉛筆をくれませんか」と聞かれたので、教室で拾ってそのまま持ってきてしまったチビ鉛筆を渡した。
石塀に寄りかかった老人が居た。
「鈴をくれませんか」という言葉には内心焦った。
そう言えば、マスコットがぶっちぎれたのでやると押しつけられた、
鈴だけ付いている根付けがある。
何年も前に誰かから押しつけられたものだが、その誰かが思い出せなかったので時候だと思い渡した。
次あの老人だったら断ろうと思っていたが、会うたび会うたびどうしても前にあったおじいさんの容姿が思い出せなくて返答に詰まった。
イメージは大体重なるのだが、細かいパーツや服装自体がどうしても思い出せない。
上の方に書いたのも、大分時間を掛けてなんとか思い出した要素だ。

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