Categories: 洒落怖

復讐

この怖い話は約 3 分で読めます。

338 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 21:24:00.90 ID:+KkaE0hI0
5/8
そんな不吉な噂でも女子の間では占い感覚でもてはやされていた。お電話様とかダイヤル様なんて呼称して、傍から聞いている分には酷くこっけいな名前だった。
興味の中心は女の子らしく恋バナで、片恋相手とはうまくいくか、いつ結婚するのか、子どもは何人産まれるんだ、そんなことをお電話様に聞いているらしかった。
ただ俺自身はそのお電話様なんてのと話したこともなければ、ひとりでに鳴る公衆電話のベルも耳にすることは無かった。

340 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 21:27:29.57 ID:+KkaE0hI0
6/8→6/12
話を戻そう。
俺は兄と二人でその電話ボックスに横付けされた車の中にいる。
このご時勢にまだ電話ボックスがあったことに少し驚いたが、当時同様今もうちの中学は携帯の持参を認めていないのだろう。
そんなことを考えているうちに兄は勢いよく車外に飛び出し、トランクを開けごそごそと何やら取りだした。出てきたのは一昨日買った掃除道具だった。昨日使わなかったと思っていたが車に乗せっぱなしだったのか。
マスクをし、購入品一式をアスファルトの上に並べると今度は財布からテレホンカードを取り出した。
「いいものを見せてやる」
そう言ってバケツと一緒に電話ボックスに入り、カードを挿入しボタンをプッシュしだした。しばらく受話器に耳を当てたかと思うと、紐をだらんと垂らして受話器を放置しバケツの中から洗剤の容器を取り出した。冬の冷たい空気に、微かに電話の呼び出し音が響いていた。

341 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 21:28:42.13 ID:+KkaE0hI0
7/12
手にした洗剤の封を開け、中身を勢い良くバケツに注ぐ。1本目を入れ終えるとすぐさま2本目を開封した。二つ目の容器も空になるとそれらを無造作に投げ捨て、バケツを放置し電話ボックスから出てきた。続けてガムテープでドアを目張りする。
ドアを閉められてコール音が聞こえなくなった。さらにバケツからはなにやら気体が発生しているのがわかる。電話ボックスの中は霧に包まれ次第に白く濁っていった。
「窓を閉めとけ」
背中を向けたまま兄がそう言った。危ないからな、と。
兄はガスで見えなくなったガラスの向こうを見つめていた。聞こえないはずのコール音がまだ響いている気がした。

346 本当にあった怖い名無し sage New! 2013/01/25(金) 22:00:04.69 ID:+KkaE0hI0
8/12
1分くらいたっただろうか。
「・・・だめか」
兄がそうつぶやいた。どうやら電話が切れてしまったらしい。
兄の奇行と冬の寒さに固まっていた思考回路がようやく働き出し、そろそろ行こうと声を掛けたが、兄は動かなかった。
「もう少し」
そう言ったんだと思う。兄のその返事にかぶさるように今度はけたたましく電話の呼び出音が響いた。
余りに突然のことで、一瞬耳が痛いようだった。電話は切れたんじゃなかったのか、もっと言えば受話器はまだぶら下がったままのはず。
そんな状態でいったい誰から掛かってくるというのだろう。
答えられるはずもなかった。

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