Categories: 洒落怖

天ぷら

この怖い話は約 3 分で読めます。

ところが何故か、弟は天ぷら職人の道を選ぶようになったんだとか。
理由は、ホカ弁に入ってるチクワの唐揚げを食って感動したかららしい。(と聞かされたんだと)
そして、そいつの母方の親戚が営んでいる、フランチャイズ系の天丼屋でバイトをする事にしたんだと。

やがてそこの店主が亡くなり、天丼屋も閉店するという事になったんだけど、そこで何を血迷ったのか
地元でそこそこ有名な天ぷら専門店で修行することを選んだらしい。

俺「え、聞いてた話と全然違うぞ?」
同級生「一応話は最後まで聞け」

厳しいながらも、「美味い天ぷら」が食えるというモチベーションを元に修行を頑張ったんだそうな。
そしてそれは、「美味い天ぷらが食いたい」という目標から、「店を持ちたい」という夢に変わっていった。
ところがその天ぷら屋、去年の3月で閉店してしまった。311の地震で店舗が壊滅的になってしまったかららしい。
(意外と地元にはそういうところが多かったりする)

785 本当にあった怖い名無し sage New! 2012/10/16(火) 11:07:30.50 ID:trL373dc0
「まだ修行は続けたい」って気持ちはあったものの、Kはここで一度立ち止まることを選んだ。
貯金は結構あるので、旅でもしてもっと美味いものを探してみたい。
とりあえずその前に、料理下手な俺の親に、俺の修行の成果を見せてやりたいって思うようになったんだそうな。

俺はその日休みで、本屋から帰ってきたら台所にKがいた。
エビやイカとか魚とか、野菜とかの下ごしらえをしていた。

俺「おうK。お前天ぷら作ってくれるのか。」
K「ああ。晩飯に振る舞ってやるよ。楽しみにしておいてよ。」
俺「火事にだけは気をつけろよ。」

そんな会話だけして、俺は二階に上がっていった。
それが俺とKの交わした、最後の会話だった。

二階に上がって買ってきたマンガを読んでいたら、暫くして母親が帰ってきた音がした。
その途端、母親とKが何やら揉め始めた。
母「ちょ、ちょっと!!危ないからやめてよ!揚げ物なら私がやるからさ!!」
K「うっせえよ。俺がやってんだから邪魔すんなよ!」
母「だ・か・ら、危ないって!やめて!あたしがや・る・か・ら・!」
バタンバタンといった物音と、母親の怒鳴り声、そしてそれを追い払おうとするKの怒鳴り声が聞こえた。

そんな揉めてる音が断続的に10分ほど続いたその時だった。

K「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

786 本当にあった怖い名無し sage New! 2012/10/16(火) 11:11:27.05 ID:trL373dc0
俺「・・・だから、何?」
同級生「これは推測だけど・・・Kが死んだのは自殺じゃなくて、多分うちの母ちゃんが殺したんだと思う。」
俺「なんでよ・・・」
同級生「うちの母ちゃん、「天ぷらなんて、素人が家庭用のコンロでまともに作れるもんじゃない」って豪語してたから。
     多分Kが、母ちゃんと同じ環境で、きちんと天ぷら作れることを照明されるのが、怖かったんだと思う。」

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