Categories: 洒落怖

噂の廃屋

この怖い話は約 3 分で読めます。

小学生の時、近所に廃屋があった。
噂では、そこで気の狂った夫に奥さんが刺されて殺されたらしく、
その頃された奥さんの幽霊が出るとの事だった。

その廃屋の裏口には鍵が掛かっていなくて自由に入れるが、
何故か内側からはどうやっても扉が開かないということだった。
出るためには一番奥の部屋の割れた窓から出るしかないが、
出るまでに振り向いてしまうと、奥さんの幽霊に錆びた包丁で刺し殺されてしまうとも囁かれていた。

噂は、近所のお兄ちゃんが実際にはいっただとか、
友達の友達がそこで幽霊を見たらしいといった、真偽の怪しい噂だった。
六年生だったオレと友達のAとBは、中学生に上がる前に、小学校生活最後の思い出として、その噂を確かめようと思い立った。
556 本当にあった怖い名無し New! 2014/01/30(木) 00:21:52.54 ID:qVswGylE0
途中で駄菓子屋に寄ったり、Aの家から懐中電灯と、
Bの家から高校で野球をやっていたBお兄ちゃんの金属バットを持ち出すために寄り道をしながら、
オレ達は夕方に廃屋についた。

夜だと怖すぎるが、昼間だと面白くなさそうだと言う事で夕方にしたが、
鮮やかなオレンジ色の夕焼け空の下で影濃く佇む廃屋は、雰囲気としては十分すぎるほど不気味だった。

草が俺たちの腰ぐらいの高さまでぼうぼうと生えた玄関を抜けて裏手に回ると、
確かにそこに裏口はあった。

尻込みしているオレとAを馬鹿にしながら、Bは勝手口の扉に手をかけた。
すると、扉は錆びた音もなく開いた。

僕たちはあまりの普通さに、少し拍子抜けした気分になった。

557 本当にあった怖い名無し sage New! 2014/01/30(木) 00:28:06.58 ID:qVswGylE0
暫くオレたちは扉を開けたり閉めたりして騒いでいたが、
近くのスピーカーから五時のチャイムを聞くと、そろそろ入ろうかとAが口にした。

言いだしっペと言う事で先ずAが中に入り、十数えた後にオレとBが外から扉を開ける。
その間にAは、本当に内側から扉が開かないのかどうかを確かめると言う事になった。

ふてくされたようにAが廃屋に入り扉を閉めると、直ぐに慌てたAの声が聞こえた。
十数えてから扉を開けると、Aは涙を浮かべて飛び出すように外に出てきた。

何故か怒り狂っているAに誰も外から扉を押さえていない事を説明したがAは信じず、
結局、オレとBも交互に一人で入って、本当に中からは扉が開かない事を確かめさせられた。

558 本当にあった怖い名無し New! 2014/01/30(木) 00:34:01.09 ID:qVswGylE0
暫くそうして交互に入って遊んでいたが、正直なところ、オレ達はもうそれ以上奥に進む気はなかった。
十分に怖い思いもしたし、それを存分に楽しんだからだ。

それで今日はもう帰ろうと言う事になった時、廃屋の表に停めておいた自転車の前で、Bが青い顔をしてポケットをまさぐり始めた。
どうやらBは、鍵を廃屋の中で落としたらしい。

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