Categories: 洒落怖

噂の廃屋

この怖い話は約 3 分で読めます。

オレ達は文句を言いながら裏手に戻り、Bに早く探しにいくようにせき立てた。
しかしすっかり日が傾き殆ど夜同然の暗さになったせいか、Bは一人で入るのはイヤだとだだをこね始めた。
仕方なくオレとAは、扉を石で押さえて開けっ放しにしておく事を条件に、Bの自転車の鍵の探索を手伝う事になった。

561 本当にあった怖い名無し sage New! 2014/01/30(木) 00:39:11.78 ID:qVswGylE0
しかしどれだけ探しても、Bの自転車の鍵は入り口の近くでは見つからなかった。
そこでAが自宅から持ってきた懐中電灯を照らしながら少し奥に進んだ時、
突然、裏手の扉が閉まってしまった。

慌てた僕たちが焦って何とか扉を開けようとしていると、
外から女の甲高い笑い声が聞こえてきた。

幽霊だ。

AかBのどちらかがつぶやいた。
僕らは完全にパニック状態になり、
Bは泣きながら持ってきた金属バットで扉を叩き始め、
Aは懐中電灯をめちゃくちゃに振り回し始めた。
オレはとにかく怖くて、その場にしゃがみ込んで怖い怖いと声を上げて泣いていた。

563 本当にあった怖い名無し New! 2014/01/30(木) 00:45:24.55 ID:qVswGylE0
その内にAが割れた窓から出ようと叫び、僕らはパニックになったまま間取りを知らない廃屋の中を真っ直ぐ勝手口から遠ざかるように走り出した。
広くもない廃屋だから、その場所は直ぐに見つかった。
廃屋の居間のガラスが確かに噂通り割れていて、そこには段ボールが張ってあるのがAの懐中電灯の光に照らされていた。
Bがバットでそこを思い切り叩くと、ガムテープででも貼ってあっただけなのか、すんなり段ボールは外れ、オレ達はそのままそこから外に飛び出した。
オレ達は、それまで一度も振り向かなかった。
噂が、今のところ全て真実だったからだ。

564 本当にあった怖い名無し sage New! 2014/01/30(木) 00:52:43.81 ID:qVswGylE0
オレ達は外に出てもまだ生きた心地がせず、全速力で自転車まで走った。
そうして辿り着いた自転車を停めておいたところには、柄の悪そうな中学生の男女が、
僕らを指さして腹を抱えて笑っていた。

呆然とする僕たちに、彼らは入り口の近くで怖々何科を探している僕たちを脅かすために扉を閉めた事を白状した。
安心したオレたちが自分たちの涙で濡れた顔を見合って笑い出した。

中学生の不良達曰わく、ここに元住んでいた人たちは借金で夜逃げしただけで、誰も死んでは居ない事をオレ達に教えてくれた。
扉が中から開かないのも立て付けが悪いだけで、中学生ぐらいの力であれば、数人で体当たりすれば普通に開くらしい事も、合わせて教えてくれた。
オレたちは急に怖がっていた自分たちが恥ずかしくなり、ここで煙草を吸っている事を誰にも言わないことを不良達と約束すると、そのままその場で解散してそれぞれの家路に向かった。
Bの自転車の鍵は、取り敢えず公園で遊んでいる家になくした事にした。

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