Categories: 洒落怖

怖い井戸

この怖い話は約 3 分で読めます。

大学時代、18切符で旅するのが好きだった。
その時は夏休みで俺は大阪を出て標語を走る電車に乗っていた。
途中姫路に寄り、夕方4時頃今日泊まる旅館のあるTという駅に着いた。
旅館は駅から徒歩15分くらいで、山の麓にある小さなところだった。
疲れていたのでチェックインしてすぐ部屋に布団敷いて数時間眠り、
風呂に入って夕食を済ませたのは11時頃だった。
そのまま部屋に戻るのもなんなので、しんとしたロビーに座って
新聞を眺めていた。ふと気付くと、自分以外に人がいた。ひげ面のおっさんが
向かいのソファに座ってこっちを見ている。
622 :本当にあった怖い名無し:2014/03/26(水) 17:19:48.52 ID:G/dYpKDX0.net
「兄ちゃん、一人か?」
「ええ、まあ」
ぶしつけに話しかけてこられたので少し面食らったが、非日常の気安さか
俺も自然に応じていた。
「どこから?」
「Tですけど」
「おお、俺も昔そっちに住んでたんだよ」
「はあ」
「今日はどこに行ったね?」
「姫路城とか・・・」
「どうだったね?」
「さすが世界遺産は見応えがありましたね」
「ほう」
だいぶ聞こし召しているのかやたらにこやかだった。
「あと、怖い井戸がありました」
「井戸?」
急におっさんの表情が強張った。

623 :本当にあった怖い名無し:2014/03/26(水) 17:24:08.90 ID:G/dYpKDX0.net
「ええ、お菊の井戸です。番町更屋敷って姫路の怪談だったんですね。
知りませんでした」
「へえ・・・井戸ね。怖い井戸・・・」
おっさんは小さくつぶやきながら表情を消して空中に視線を彷徨わせている。
俺はいきなりの変化にとまどい、そろそろ部屋に帰ろうかと腰を浮かしかけた。
「怖い井戸と言えば、俺も一つ知ってるんだよ」
「え?」
このおっさんはまた唐突に何を言い出すのかと思い、俺は眉を顰めた。

624 :本当にあった怖い名無し:2014/03/26(水) 17:29:17.53 ID:G/dYpKDX0.net
「昔自衛隊の基地に荷物を運ぶ仕事をしていてね。とある大きな基地に行ったとき、
許可を貰って敷地内の林を散策していると、不意に開けた場所に出てね。
その真ん中に全体を鉄条網で囲った立派な井戸があったんだよ。
意外な場所に意外なものがあると思って近付いてよく見てみると、
半径2メートル位の鉄製の丸い縁にこれまた鉄製の分厚い蓋がしっかりと
閉めてあった。所々錆びてはいたが、まだそう古い作りではなかったな」
この話は一体どこへ向かうのだろうかと思いながらも、俺は何となく聞き入っていた。
一階にいるのは俺たちだけみたいだ。

625 :本当にあった怖い名無し:2014/03/26(水) 17:31:30.14 ID:G/dYpKDX0.net
「それでぐるっと一周してみて、おかしな事に気付いたんだ。鉄条網のトゲトゲが
内側についてるんだよ」
「内側?」
「そう、おかしな話だろ?普通外から入れなくするためなのに、
まるで中から出さないようにしているみたいだった。それでなおもよく見ようと
金網に顔を近付けたとき、後ろからピピーッって凄い音がしたんだ。
振り向くと二人の自衛隊員がもの凄い剣幕で走ってくるところだった。
いきなり怒鳴りつけられてね。そのまま事務所に連行されちゃった」

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